太陽活動が20年間で低下 南北半球の周期ずれも

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【2012年5月31日 国立天文台

金環日食や金星の太陽面通過などで観察の機会が増えてきた太陽。その電波と磁場の20年間にわたる観測から、太陽活動が徐々に低下し、また両半球で周期のずれが起こっていることがわかった。


野辺山電波へリオグラフ

野辺山電波へリオグラフは太陽電波観測専用の電波干渉計。口径80cmのパラボラアンテナ84基からなり、1992年から20年間、周波数17GHzで太陽の全面像を撮像している。クリックで拡大。(提供:国立天文台。以下同)

20年間にわたる太陽磁場と電波の強度分布の変化

20年間にわたる太陽磁場と電波の強度分布の変化。クリックで拡大

NASAおよび国立天文台野辺山太陽電波観測所の研究者らは、野辺山電波ヘリオグラフ(画像1枚目)による電波観測と米キットピーク国立天文台などによる磁場観測データを用いて、過去20年間にわたる太陽の活動を、極域を含む全球レベルで追跡した。

画像2枚目は、太陽磁場(上図)と電波(下図)の強度分布の変化を表したものだ。磁場観測では、よく黒点の数で表されるような低緯度での活発度を、電波観測では、磁場では観測が難しい極域の活発度を、それぞれ見ることができる。

縦の点線は太陽活動の極小期にあたる時期を示しているが、下図を見ると、極域での活発度は1996年よりも2008年の方が低くなっていることがわかる。

また2012年3月には、極域での電波減少と磁場のN極S極の逆転から、北半球では太陽活動がピークになっていることがわかる。一方で南では高緯度での電波強度は高いままで、南半球全体としては未だ活動ピークに向けて上昇中のようだ。

また、北半球では「高緯度の電波が強いときは低緯度で弱く、高緯度が弱いときは低緯度で強い」という逆相関性が見られるが、南半球ではそれも崩れてしまっており、高緯度と低緯度の活動がずれていることもわかった。

これらの結果は、太陽観測の技術環境が整って以来初めて見られるものだという。今後もこの傾向は継続すると思われるが、17世紀〜18世紀の「マウンダー極小期」のような時期が再来するのか、いつ回復するのかといったことは、はっきりとは予測できない。活動の正体である磁場(黒点、極域)の生成機構やその変動の原因は不明であり、現時点で根拠をもって回答することはできないという。

今回の結果は太陽物理学の問題であるとともに、太陽活動に依存している惑星間空間や地球上層大気への長期間にわたる影響にも関わる。長期間にわたる安定した高品質のデータを得るとともに、太陽、惑星間空間、地球大気を総合した研究が必要であると研究チームでは述べている。