2021年の木星は8月~12月ごろに観察シーズンを迎えます。マイナス2等級ととても明るいのでよく目立ち、街中でも簡単に見つけられます。土星と並んでいる光景が目を引きます。
木星を双眼鏡で観察すると、木星の周りを巡る4つのガリレオ衛星が見えます。日々並び方が変化する様子は見ものです。天体望遠鏡を使うと木星表面の縞模様や大赤斑も観察でき、さらに面白くなります。
目次
木星を見つけよう
夜半の明星
「夜半の明星」とも呼ばれる木星は、とても明るく光る惑星です。建物などに遮られなければ、街明かりがあるようなところでも簡単に見つかります。
2021年の木星は8月中旬まで「みずがめ座」にあり、8月中旬から12月中旬まで「やぎ座」、その後再び「みずがめ座」に移ります。初秋から冬が見ごろです。また、秋には土星も見ごろです。間隔はやや開いていますが、明るい2惑星が並んでいる光景が楽しめるでしょう。
木星に関する現象カレンダー
2021年6月~2022年1月ごろに起こる、木星と月との接近などは、以下のとおりです。月との接近は、やや間隔は大きくなりますが前後の日にも見ることができます。
日付 | 現象 | 備考 |
---|---|---|
5月26日 | 西矩(せいく) | 太陽から90度西に離れる(日の出のころ南に見える) 黄道座標系では22日 |
6月21日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を東→西に動く(逆行する)ようになる |
6月28日 | 月(月齢18)と並ぶ | 深夜~明け方 |
8月20日 | 衝(しょう) (›› 解説) | 太陽の反対に来る(深夜に南に見える) |
8月22日 | 月(月齢14)と並ぶ | 夕方~未明 |
9月上旬 ~10月上旬 |
やぎ座の3等星 デネブアルゲディと大接近 | 夕方~未明 最接近9月17日ごろ |
9月18日 | 月(月齢11)と接近 (›› 解説) | 夕方~未明 |
10月15日 | 月(月齢9)と接近 (›› 解説) | 夕方~未明 |
10月18日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を西→東に動く(順行する)ようになる |
11月11日 | 月(月齢7)と並ぶ | 宵~深夜 |
10月下旬 ~11月下旬 |
やぎ座の3等星 デネブアルゲディと大接近 | 夕方~深夜 最接近11月17日ごろ |
11月21日 | 東矩(とうく) | 太陽から90度東に離れる(日の入りのころ南に見える) 黄道座標系では16日 |
12月 9日 | 月(月齢5)と接近 (›› 解説) | 夕方~宵 |
1月 6日 | 細い月(月齢4)と並ぶ | 夕方~宵 |
2月 3日 | 細い月(月齢2)と並ぶ | 夕方~宵 |
3月 6日 | 合 | 太陽と同じ方向に来る(見えない) 黄道座標系では5日 |
木星は2022年2月上旬以降、太陽に近づいて見えにくくなり、3月上旬に合(太陽と同じ方向になること)を迎えて見えなくなります。明け方の南東の空に見えるようになるのは4月下旬ごろからです。
土星も見ごろ
今年の秋は、木星とともに土星も見ごろを迎えます。人気の2惑星を観察して楽しみましょう。
モバイルアプリを活用
星空ナビ
無料モバイルアプリ「星空ナビ」は、スマホを空にかざすだけで、その先にある天体などの情報を教えてくれます。ナビゲーション機能を使えば木星の方向まで星空ナビが案内します。
近いうちに起こる天文現象だけでなく、最新の天文ニュースもスマホに届きます。木星を見るだけでなく、探査や研究のニュースを通じて詳しく知ることでも楽しめます。また、1年間の天文情報をいつでも見られるなどの特典が得られる有料プランもあります。
ガリレオ衛星や縞模様を観察しよう
ガリレオ衛星
木星には70個以上の衛星が見つかっています。そのうちイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストは大型の衛星で、双眼鏡や小型望遠鏡でも存在がわかります。1610年にガリレオが発見したことから、この4つはとくにガリレオ衛星とも呼ばれています。
ガリレオ衛星のうち、一番木星に近いイオはわずか2日弱で木星の周りを一回りします。一番外側のカリストも一回りするには約17日ほどしかかかりません。このため、ガリレオ衛星の位置は目まぐるしく変化します。木星の裏に回ったり木星の影に入ったりして、見えなくなっていることもあります。
衛星の動きをシミュレーション動画にしたので、観察の際の参考にしてください(I:イオ/II:エウロパ/III:ガニメデ/IV:カリスト)。図は上が北になっています。天体望遠鏡では像が回転していることが多いので見比べるときには注意しましょう。
上級者向け情報:6年に1度の「衛星相互現象」
今季は6年に1度の「ガリレオ衛星の相互現象」シーズンです。地球から見てある衛星が他の衛星に隠されたり(掩蔽)、他の衛星の影に入って暗くなったり(食)する「相互現象」が何度か起こり、衛星の明るさが変化する様子を観察できます。
現象の仕組み、観察や撮影のポイント、見やすい現象の日時について、詳しくは「星ナビ」2021年4月号の特集記事をご覧ください。
縞模様と大赤斑
天体望遠鏡で木星を見ると、縞模様があるのがわかります。口径5cm程度の小型望遠鏡でも、目立つ2本を確認できるでしょう。
口径が大きくなると、さらに多くの縞模様が見えてきます。気流が安定しているとき(風がないとき)や木星が南の空に見えるとき(昇った直後や沈む直前ではないタイミング)のほうが条件良く見えるでしょう。
さらに、大赤斑という模様も見えるかもしれません。大赤斑は直径が地球数個分もある、巨大な台風のようなものです。木星は約10時間で自転しているので、大赤斑が裏にまわっていることもあります。シミュレーション動画やステラナビゲータを参考にして、タイミングを見計らって観察するようにしましょう。
›› 天体写真ギャラリー「木星」 【2021年】 【2022年】
公開天文台や科学館などで開催される観望会(観察会、観測会)では、大きい望遠鏡で木星を見ることができます。お近くのイベント情報は、全国プラネタリウム&公開天文台情報ページ「パオナビ」で検索してみてください。
※新型コロナウイルス感染症対策として、事前申し込みや人数制限などの可能性があります。詳しくは施設やイベント主催者などにご確認のうえ、安全に注意してご参加ください。
木星を撮影してみよう
カラーCMOSカメラを天体望遠鏡に接続して惑星を動画撮影し、その中から写りの良いフレームだけを選んで多数枚コンポジットすると、精緻で滑らかな惑星像を得ることができます。天体画像処理ソフトウェア「ステライメージ」を使うと、動画からのコンポジットはもちろん、カラーバランス調整やディテール強調まで簡単かつ詳細に行えます。画像を「作品」に仕上げてみましょう。
オンラインショップ
アストロアーツのオンラインショップでは、天体望遠鏡や双眼鏡を多数取り扱っています。縞模様や衛星の動きを、自分の目で観察してみましょう。ライトやクッションなどの便利グッズ、太陽系のことが詳しくわかる書籍などもあります。
木星に関するマメ知識
太陽系最大の惑星
木星は大きさ(赤道部分の直径)が地球の約11倍、質量が地球の約320倍ある、太陽系の惑星の中で最大の天体です。主成分は水素やヘリウムといった気体で、巨大ガス惑星に分類されます。また、約10時間で自転しており、これは太陽系の惑星の中で最速です。
表面の模様
特徴的な表面の模様は、木星の雲を見ているものです。雲は主にアンモニアやその化合物でできていますが、少量の他の物質が太陽光と反応することでオレンジ色に見えます。明るい部分(帯)は上昇気流の部分、暗い部分(縞)は下降気流の部分で、その中に見える大赤斑や白斑は木星の嵐です。まれに、木星に小天体が衝突し、その痕跡の模様が地上や宇宙望遠鏡で観測されることもあります。
また、非常に強い磁場を持っているため、北極や南極の周辺でオーロラが発生することもあります。
星座の中の動き
木星の公転周期は約12年です。したがって、地球から見ているとおよそ1年ごとに、星占いの星座を1つずつ進んでいくということになります。干支の12年で空を一巡することから、中国では「歳星(さいせい)」とも呼ばれます。
木星探査
1970年代に「パイオニア計画」や「ボイジャー計画」によって探査機が木星に接近し、表面の詳細な観測や環の発見、新たな衛星の発見などの成果を挙げました。
1989年に打ち上げられた探査機「ガリレオ」は、史上初めて木星を周回しながら観測を行いました。ガリレオは1995年から2003年にかけて木星やその衛星を観測し、数々の美しい画像や科学データをもたらしました。また、土星探査機「カッシーニ」や冥王星・太陽系外縁天体探査機「ニューホライズンズ」も、それぞれのメインターゲットへと向かう途中に木星を観測しています。
2011年8月に打ち上げられ2016年7月に木星に到着した探査機「ジュノー」は、木星の北極と南極を通る楕円軌道を周回しながら、木星の大気や磁場、内部の様子などを調べています。