LIGOとVirgoが4件の重力波イベントを新たに検出
【2018年12月10日 LIGO Caltech】
12月1日、LIGOとVirgoの合同研究チームは、これまでに検出されたすべての重力波イベントを収録したカタログを公開した。これには恒星質量ブラックホール連星の合体による重力波が10件、中性子星同士の合体による重力波が1件含まれている。ブラックホールの合体現象のうち6件はこれまでに発表済みの現象で、残り4件は今回初めて公表されたものだ。
2002年から観測を開始したLIGOは、2010年から2015年まで検出器の感度を上げる改良が行われ、「Advanced LIGO」と呼ばれるようになった。Advanced LIGOでは2015年9月12日から2016年1月19日まで最初の観測運用(O1)が行われ、ブラックホール合体からの重力波が3件検出された。2回目の観測運用(O2)は2016年11月30日から2017年8月25日まで行われ、中性子星連星の合体が1件、ブラックホール合体が7件検出された。今回新たに発表された4件の重力波イベントもこの期間に検出されたもので、検出された日付からGW170729, GW170809, GW170818, GW170823と命名されている。
今回公開された重力波カタログに収録されている現象の中には、これまでの記録を更新するものも含まれている。たとえば、第2回観測運用で2017年7月29日に検出されたGW170729は、これまで観測された中で最も重く、かつ最も遠い距離にある重力波源だ。この合体現象は約50億年前に起こったもので、太陽質量5個分に相当するエネルギーが重力波として放出された。
GW170814は3基の検出器(LIGOの2基とVirgoの1基)で検出できた最初のブラックホール連星の合体現象だった。このイベントでは重力波の偏波観測にも初めて成功した。
この3日後に検出されたGW170817は、中性子星同士の連星が合体して放出された重力波を初めて観測できた例だ。この合体現象は重力波だけでなく光でも追観測が行われた。これは、電磁波や重力波など、天体から放出される様々な情報の担い手(メッセンジャー)を同時に観測するという「マルチメッセンジャー天文学」の分野に新たな一ページを記す重要な成果となったものである(参照:「連星中性子星の合体からの重力波を初検出、電磁波で重力波源を初観測」)。
今回発表された新イベントの一つであるGW170818もLIGOとVirgoのネットワークで検出されたもので、天球上の位置をきわめて正確に求めることができたものだ。LIGOとVirgoの複数の検出器で重力波の信号が到着する時刻の差を利用すると、天球上での位置を絞り込むことが可能になる。このイベントのブラックホール連星は地球から25億光年の距離にあり、天球上の位置を39平方度という精度で特定できた。これはGW170817に次いで最も精度よく位置を決定できた観測例だ。
LIGOの副所長を務める米・カリフォルニア工科大学のAlbert Lazzariniさんは、「4件の新たなブラックホール連星の合体現象が発表されたことで、こうした連星系の数についてより深い知見が得られるでしょう。また、このタイプのイベントの発生頻度にも、より良い制限を与えるものとなるでしょう」と語っている。
「わずか1年で、LIGOとVirgoの合同観測によって重力波の科学は劇的に進展しました。これまでに検出されたイベントの頻度から考えて、さらに目覚ましい発見が私たちを待っていると思います。LIGOと国際協力機関によって得られた成果は、NSFにとっても誇りです。今後、LIGOの検出感度がより改善されることでさらに素晴らしい進展があることを期待しています」(米国立科学財団(NSF)物理学部門主任 Denise Caldwellさん)。
2019年春から始まる次の観測運用では、さらに多くの重力波候補が見つかり、研究者コミュニティが行える科学もさらに広がることが期待される。位置決めの精度が大幅に向上することで、重力波源から放射される別のメッセンジャーを迅速に見つけられるようになるだろう。
(文:中野太郎)
〈参照〉
- LIGO Caltech:LIGO and Virgo Announce Four New Detections
- LIGO:LIGO and Virgo release catalog of gravitational-wave events from first and second observing runs
- Virgo:LIGO and Virgo Announce Four New Gravitational-Wave Detections
- arXiv:論文プレプリント
〈関連リンク〉
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