アルマ望遠鏡で探る、木星の嵐の内側

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アルマ望遠鏡を用いた木星の電波観測により、渦巻く雲から50km下までの大気の様子がとらえられ、雲の下に広がるアンモニアガスの3次元分布図が作成された。

【2019年8月29日 アルマ望遠鏡

木星を観察すると、茶色と白の帯や渦巻く雲、巨大な嵐である「大赤斑」などが見られる。木星の大気は主に水素とヘリウムで構成されており、メタン、アンモニア、硫化水素、水などの微量ガスが含まれている。表層の雲はアンモニアの氷でできており、その下には硫化水素アンモニウムの粒子の層が、さらに深いところには液体の水を含む雲がある。

このような、表層の雲の下で何が起こっているのかを調べるには可視光線や赤外線による観測だけでは不十分であり、電波観測が有効な手段となる。

米・カリフォルニア大学バークレー校のImke de Paterさんたちの研究チームは2017年に、アルマ望遠鏡を使って木星を観測した。この年の1月に、アマチュア天文家によって木星の南赤道帯でプルームの噴出が観測されたことを受けて、研究チームは噴出の数日後にプルームと南赤道帯の下層の大気の調査を行った。

木星の電波画像
アルマ望遠鏡による木星の電波画像。暗い帯は低温域で、大気が上昇する領域に対応し、可視光線では白く見える。明るい帯は高温域で、大気が下降する領域に対応し、可視光線では茶色く見える。画像には10時間以上のデータが足し合わされているため、木星の自転によって細部が塗りつぶされている(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), I de Pater et al.; NRAO/AUI NSF, S. Dagnello)

プルームとは、可視光線の波長では小さな白い雲のように見える現象で、木星の帯を大きく乱す可能性があると考えられている。2017年1月の噴出では、最初にプルームが見え、その後に南赤道帯で大規模な乱れが観測された。この現象は数週間にわたって続いたが、もっと長期間にわたって見られることもある。

プルームの位置
プルームの位置。(上)アルマ望遠鏡による電波画像、(下)ハッブル宇宙望遠鏡による可視光線画像(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), I de Pater et al.; NRAO/AUI NSF, S. Dagnello; NASA/Hubble)

アルマ望遠鏡による電波観測の結果、表層のアンモニアの雲から50km下までの大気の様子がとらえられ、雲の下にあるアンモニアガスの3次元分布図が作成された。さらに、表層で大規模な噴出が起こった後の下層大気を調査することもでき、ほぼ同時期に他の望遠鏡で観測された紫外線・可視光線・赤外線の画像との比較も行われた。

「観測によって、木星の表層で大規模な噴出が起こっている間、高濃度のアンモニアガスが上層へ引き上げられていることが初めて明らかになりました。また、複数の波長で観測された同時期の画像を組み合わせることで、表層の噴出を詳細に調べられました。その結果、大気の下層にある水の雲の水蒸気の対流によってプルームが引き起こされるという、現在の理論を裏付けることができました。プルームは、大気の深層から上層へアンモニアガスを引き上げ、表層のアンモニア雲にまで至ります」(de Paterさん)。