愛知の山本さん、いて座に新星らしき天体を発見
【2006年2月20日 VSOLJニュース(151) / 国立天文台 アストロ・トピックス(190)】 2月22日更新
(VSOLJニュース)
新星は、天の川の方向でたくさん発見されます。私たちの銀河系の中心方向にあたるいて座では、新星が数多く見つかっていますが、毎年冬の時期には太陽がいるため、この方向の観測はできません。明け方の東の空にいて座が見える毎年この時期は、新星シーズンの到来とも言える季節です。
そのいて座に、今年も新星が発見されました。世界最初の発見は、チリのLillerさんで、2月17.37日(世界時、以下同様)に撮影した写真上に、9.0等の新しい天体を見いだしました。5.36日に氏が撮影した写真では、11.0等より明るい天体は見当たりません。また、愛知県岡崎市の山本稔(やまもとみのる)さんも、17.84日に撮影したデジカメ画像で、8.6等の天体を発見しました。CBETによる、精測位置は以下の通りで、さそり座といて座の境界、わずかにいて座に入ったところになります。
赤経 17時58分52.61秒 赤緯 -36度47分35.1秒 (2000年分点) 新星周辺の星図
分光観測などはまだですが、この位置には昔の写真にも天体が見られないこと、X線や赤外線で明るい天体もないことなどから、古典新星である可能性が高いものと思われます。
明け方の薄明が始まる時点で、チリ北部ではこの空の場所は高度40度ほどにもなり、観測しやすいところですが、日本では高度10度ほどにしかなりません。日本のアマチュア天文家の熱心さをまたひとつ示した発見と言えるでしょう。
<2月22日更新分>
vsolj-news 151でお伝えしたいて座の新星らしき天体は、発見者のLillerさんが分光を行って、古典新星であることが確認されました(CBET 407, IAUC8673)。また、この新星には、V5117 SgrというGCVS名が付けられました。
(国立天文台アストロ・トピックス)
愛知県岡崎市の山本稔(やまもとみのる)さんが、2月17.84日(世界時、以下同)、いて座を撮影中のデジタルカメラの画像に8.6等級の新星と思われる天体を発見しました。この結果は九州大学の山岡均(やまおかひとし)さんを通じて、国際天文学連合に報告されました。また、それ以前の2月17.37日、チリのLillerさんが撮影した写真上に、9.0等級の新星らしき天体を観測していますが、2月5.36日に同氏が撮影した写真には、11等星より明るい天体は写っていないことがわかりました。その後の観測で"2006年いて座新星(NOVA SAGITTARII 2006)"と命名されました。
W.Lillersさんたちが2月19日、この星の低分散分光観測を行った結果、水素のバルマー線にかなり強い輝線が確認されたことなどから、これは古典的新星の可能性が高いと推測されます。
明け方の薄明の頃、チリ北部ではこの星は高度40度ほどにもなり、観測しやすい位置になりますが、日本では高度10度程度にしかなりません。山本さんはベテラン観測者で、2003年いて座に8.9等星の新星を発見する(国立天文台・天文ニュース(633))など、これまで多くの新星を見つけており、今回の発見はそれに続く快挙です。天の川中心部(いて座の方向)が見やすくなりはじめた矢先の発見は、日本のアマチュア天文家の熱心さがまたひとつ足跡を示した発見と言えるでしょう。
「2006年いて座新星」の位置:この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ Ver.7」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行ってください。