エンジントラブル乗り越え、「はやぶさ」帰還の旅は続く
【2009年11月20日 宇宙航空研究開発機構(JAXA)】
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、4日にイオンエンジンのトラブルが発生していた小惑星探査機「はやぶさ」について、2基のイオンエンジンを組み合わせて1基分の働きをさせることで、地球帰還を続行するめどがついたと発表した。
「はやぶさ」は2003年5月9日に打ち上げられ、2005年11月に小惑星イトカワへの着陸と離陸に成功した後、サンプル回収容器とともに地球への帰還を目指して飛行を続けている。その間に通信断絶や姿勢制御装置の故障など相次ぐトラブルに見舞われたものの、柔軟な設計と運用チームの機転や努力でこれを克服してきた。
ところが、「はやぶさ」の推進力をになうイオンエンジンが停止していることが11月9日に発表された。「はやぶさ」は燃料を燃やす化学エンジンではなく、電気を帯びたガス(イオン)を電気の力で噴射するイオンエンジンを使って飛行している。本来「はやぶさ」には4基のイオンエンジン(スラスタA、B、C、D)があったのだが、それぞれに異常をかかえてしまったのだ。
- スラスタA:イオンを放出する装置が不安定であるなどの理由から、打ち上げ直後に運用停止
- スラスタB:探査機本体の帯電を防ぐ「中和器」が劣化したため2007年4月に運用停止
- スラスタC:稼働できる状態だが、中和器などに不安をかかえるため温存中
- スラスタD:およそ2年間「はやぶさ」の推進力をになっていたが、中和器のトラブルで2009年11月4日に停止
「はやぶさ」は現在火星軌道付近にあり、地球への帰還を果たすにはイオンエンジンによる加速が依然として必要である。スラスタDの停止を受けて、運用チームでは対策を検討していた。そしてスラスタAの中和器を使いながらスラスタBがイオンを放出するという、2基で1基分の働きをさせる方式で「はやぶさ」を推進させることになった。
運用チームによれば、スラスタA、Bの組み合わせによる飛行は数日間続いており、まだ慎重を期する必要があるものの、2010年6月の地球帰還に向けてある程度見通しが立っているようだ。