「あかつき」軌道投入失敗の原因は燃料逆流防止弁の動作不良

【2010年12月27日 JAXA

金星探査機「あかつき」の軌道投入失敗は、燃料逆流防止弁の動作不良による燃料供給不足が原因であることがわかった。


軌道投入噴射時の異常発生の推定シナリオ

軌道投入噴射時の異常発生の推定シナリオ。クリックで拡大(提供:JAXA)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、金星探査機「あかつき」の金星周回軌道への投入失敗について原因の絞り込みと検証を行った結果、軌道投入のためのエンジン噴射の際に燃料の逆流を防止するバルブが正常に開いていなかったのが原因との判断を下し、宇宙開発委員会調査部会にその旨を報告した。

「あかつき」のメインエンジンは、ヘリウムガスの圧力により燃料と酸化剤をそれぞれのタンク内から押し出し、燃焼室で混合して爆発させることで推進力を得るしくみになっている。その際、燃料あるいは酸化剤が逆流しないよう、ヘリウムガスのタンクとそれぞれのタンクの間に逆流防止用のバルブが取り付けられているのだが、このうち燃料タンク側のものが詰まり、ヘリウムガスの圧力を遮断したために押し出される燃料の量が不足したとみられる。さらに燃料と酸化剤の混合比が規定外の値になったことで噴射方向にも異常をきたし、姿勢の乱れを感知した「あかつき」は安全のため姿勢維持モードに入りエンジン噴射を停止したとされる。

以上の推定シナリオは、当時の加速度の変化や、燃料タンクの圧力低下のデータとも一致するという。

今後検証すべき事項は大きく分けて(1)逆止弁の動作不良の原因(2)推進剤混合比の異常から噴射方向の異常に至る詳細、の2つとなっている。今後2011年夏ごろまでを目処に、再現試験や解析などを行って原因を究明し、また2016年の軌道投入再挑戦の可能性を探っていくとのことだ。

12月7日に金星周回軌道投入に失敗した「あかつき」は、金星とほぼ同一の軌道で太陽の周りを回っており、ほぼ順調に運用が続けられている。12月24日には「雷・大気光カメラ」(LAC)が立ち上げられ正常な動作が確認された。5つの搭載カメラのうち残る1つ、赤外線カメラ(IR2)の確認は来年行われるとみられる。