ガンマ線天体をつないだ「星座」をNASAが公表、「ゴジラ」「ふじさん」など
2008年7月から本格運用が始まったNASAのガンマ線天文衛星「フェルミ」は、パルサーや超新星爆発といった天の川銀河内の天体から宇宙で最も高エネルギーの現象であるガンマ線バーストまで、様々なガンマ線源(ガンマ線を放射する天体)を全天にわたって観測している。
2015年までにフェルミの広域望遠鏡LATで観測、マッピングされたガンマ線源の数は約3000個に達した。この数は、フェルミ以前に知られていたガンマ線源の10倍にものぼり、可視光線で見た5等星以上の明るい星の数とほぼ同じである。「ガンマ線源の数が肉眼で見える恒星の数に匹敵するくらいに増えたので、こうしたガンマ線源の位置を示すのに、新しい『星座』を作ってはどうかと思ったのです」(NASAゴダード宇宙飛行センター Elizabeth Ferraraさん)。
そこでNASAはこのたび、フェルミの運用10周年を記念し、天球上のガンマ線源を結んで創作した新しい「星座」21個を発表した。「アインシュタイン座」「シュレーディンガーのねこ座」「でんぱぼうえんきょう座」「ほしのおうじさま座」といったもののほか、フェルミに協力する国々に因むものもいくつか含まれており、日本に由来するものとしては「ゴジラ座」「ふじさん座」が採用されている。すべての「星座」は、特設サイト「Fermi's Gamma-ray Constellations」で閲覧することができる。
「私たちは、新しい全天LATカタログの作成を準備しています。そこには、様々な明るさのガンマ線源がさらに約2000個加わるので、ガンマ線星座がさらに充実し、高エネルギーでとらえた夜空が賑わうことでしょう」(仏・原子力・代替エネルギー庁 Jean Balletさん)。
なお、世界で公式に使われている星座は、国際天文学連合(IAU)によって定められた88個であり、今回のものがそこに加わったり置き換わったりするというものではない。また、IAUが定めているのは星座の「名前」と「境界線(領域)」であり、星を線でつないだもの(形やつなぎ方)は学術的な用語としての星座ではない。今回のガンマ線源星座はあくまでもNASAが独自に創作した「フェルミやガンマ線天文学に親しんでもらうための『星座』」に過ぎないが、大きな話題となったことで、その目的は達せられたと言えるだろう。
〈参照〉
- NASA:NASA's Fermi Mission Energizes the Sky With Gamma-ray Constellations
-
東宝株式会社:NASAの“ガンマ線天体”研究チームが日本の怪獣史上初めて「ゴジラ」を“星座”に認定!
〈関連リンク〉
- Fermi
- アストロアーツ:ステラナビゲータ
- コンテンツライブラリ「フェルミのガンマ線源星座」 ステラナビゲータの星図にゴジラ座などを表示
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