隕石のアミノ酸はガンマ線で作られた可能性
【2022年12月14日 横浜国立大学】
地球に生命の材料をもたらしたのは隕石だったという仮説がある。誕生したばかりの地球には、今よりたくさんの隕石が降り注いでいたと考えられ、炭素質コンドライトと呼ばれるタイプの隕石には実際にアミノ酸などの有機物が含まれている。しかし、アミノ酸のような複雑な分子がどのように作られたかは明らかではなかった。
アンモニア(NH3)とホルムアルデヒド(H2CO)のような単純な分子は、宇宙に豊富に存在している。横浜国立大学の癸生川陽子さんたちの研究チームは、これらの分子が熱水中で反応することでアミノ酸などが形成されることを実験で明らかにしてきた。この反応は、氷と塵が集まってできた小天体の中で起こったと想定されている。その際、氷を溶かして水を作った熱源は、初期太陽系に存在したアルミニウム26(26Al)などの放射性同位元素の崩壊熱だと考えられる。
ところで、放射性同位元素が崩壊するときには、熱だけでなく放射線も出す。アルミニウム26などの場合はガンマ線が多いが、これが有機物の合成にどれだけ影響するかはこれまで検討されていなかった。そこで癸生川さんたちは、アンモニア、ホルムアルデヒド、メタノール(CH3OH)の水溶液をガラス管に封入し、コバルト60(60CO)の崩壊で生じるガンマ線を照射する実験を行った。
その結果、照射後の溶液からアラニン、グリシン、α-アミノ酪酸、グルタミン酸、β-アラニン、β-アミノ酪酸などのアミノ酸が検出された。また、ガンマ線の総照射線量を増加させたところ、アラニンやβ-アラニンの生成量が増加した。
今回の結果を元に考察すると、現在の隕石で見つかっているアミノ酸の量は、初期太陽系におけるガンマ線の照射で十分説明できるものだという。今後研究チームは、アミノ酸だけでなく、糖や核酸塩基といったさらに複雑な分子の形成に対するガンマ線の効果についても研究を進める意向だ。
〈参照〉
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