合体して光った?連星ブラックホール

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ブラックホール連星が合体すると重力波を伴うが、理論上、光は放たない。しかし、特殊な環境での合体により発生した可能性のある輝きが、重力波とともに検出された。

【2020年6月30日 カリフォルニア工科大学

近年、連星ブラックホールや連星中性子星の合体に伴う重力波が次々と検出されている。このうち、中性子星同士が衝突する場合は明るく輝くため、重力波と電磁波で同時に観測できた例もある。一方、光を放たないブラックホール同士の合体は、そのままだと電磁波ではとらえられないはずだ。だが、環境次第では連星ブラックホールでも合体とともに電磁波で輝く可能性が、理論家たちによって提唱されている。そんなブラックホールの合体で放たれたと思われる光が、初めて観測された。

2019年5月21日に米・国立科学財団のレーザー干渉計型重力波検出器「LIGO」とヨーロッパの重力波検出器「Virgo」が重力波イベント「S190521g」をとらえた。この重力波は連星ブラックホールの合体で生じた可能性が高いと判定されている。そして、重力波がやってきたと推定される天域内にあるクエーサーJ1249+3449が増光していたことを、米・パロマー天文台で行われている突発天体掃索プロジェクト「Zwicky Transient Facility(ZTF)」が突き止めた。

クエーサーは遠方にある銀河の中心核が明るく輝いている天体で、銀河中心の超大質量ブラックホールを囲むガスの円盤がエネルギー源である。米・カリフォルニア工科大学のMatthew Grahamさんたちの研究チームは、このガス円盤の中で2つの恒星質量ブラックホールが合体したのがS190521gの正体なのではないかと考えた。

超大質量ブラックホールと周囲の円盤、円盤内のブラックホール連星の想像図
超大質量ブラックホールと周囲を取りまく円盤、円盤内に存在するブラックホール連星(手前)の想像図(提供:Caltech/R. Hurt (IPAC))

「銀河中心の超大質量ブラックホールの周囲では、恒星や恒星質量ブラックホールなどの天体同士が重力で引き合い、束の間だけペアとなることがありますが、不安定なため大抵はすぐにパートナーを失ってしまいます。しかし、ガス円盤の中なら、流れるガスによってブラックホールも整列しペアを組むことができるようになります」(米・ニューヨーク市立大学 Saavik Fordさん)。

連星ブラックホールが合体すると、一体となったブラックホールは衝突の勢いで弾き飛ばされる。そのブラックホールが周囲の円盤のガスをかき分けるように高速で移動することにより、ガスが輝いたと考えられている。このような増光は合体後数日から数週間で始まると予想されており、実際にZTFがとらえた増光は重力波の検出から数日後に始まっていた。またZTFは、輝きが1か月間にわたってゆっくり暗くなっていく様子も観測していた。

クエーサーJ1249+3449の詳細なスペクトルが測定されたのは増光が収まった後だったため、クエーサーの増光がブラックホールの合体で生じたことを裏付ける証拠のいくつかは欠けたままだ。それでも研究チームでは、他の可能性の大部分、たとえば超新星爆発やブラックホールが恒星を飲み込む際の光、超大質量ブラックホールが円盤の物質を取り込むときの輝きなどを増光の原因から排除できたとしている。

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