ガニメデに太陽系最大規模の衝突クレーター
【2020年8月3日 神戸大学】
木星の衛星ガニメデは半径2632kmと、水星よりも大きい太陽系最大の衛星である。その表面には、非常に古い地面で多くのクレーターが残る暗い色の領域(Dark Terrain)と、クレーターがほとんど見られない比較的新しい地面である明るい色の領域(Bright Terrain)がある。このうち暗い領域にのみ、クレーターの他に「ファロウ(Furrow)」と呼ばれる溝状の地形が存在している。ファロウの上に多くの衝突クレーターが後から形成されていることから、ファロウはガニメデで最も古い地形と考えられてきた。
神戸大学の平田直之さんたちの研究グループは、1979年にガニメデに接近したNASAの惑星探査機「ボイジャー1号」、1980年に接近した「ボイジャー2号」、さらに1995年から2003年にかけて木星を周回したNASAの探査機「ガリレオ」が撮影した画像を詳細に再解析し、ある地点を中心にファロウが同心円状に分布している様子を明らかにした。これは、ほぼガニメデ全体に同心円状に広がる巨大な多重リング構造(多重リングクレーター)が形作られていることを示すものと考えられる。この構造は、表面の明るい領域が形成される以前に存在していたことになる。
似たような多重リングクレーターとしては、同じく木星の衛星であるカリストの「ヴァルハラ(Valhalla)クレーター」が知られている。ヴァルハラクレーターの半径は約1900kmで、太陽系最大の多重リングクレーターとされることもあったが、今回ガニメデで見つかったものの半径は7800kmと約4倍も大きい。太陽系最大の惑星を回る太陽系最大の衛星に見つかった、太陽系最大規模の衝突クレーターだ。
大島商船高等専門学校の末次竜さんのシミュレーションによると、氷を主成分とした半径150kmほどの小惑星が秒速20kmの速度で衝突したと想定すれば、観測されている構造を説明できることがわかった。このような衝突は、40億年以上前に起こったと考えられている。
ガニメデの内部は鉄、岩石、氷という異なる密度の層にはっきりと分かれている(分化している)と考えられているが、このような分化を起こすには大量の熱が必要となる。今回見つかった巨大クレーターを形成した天体衝突が熱源となった可能性がある。
ヨーロッパ宇宙機関と日本などが開発中の木星氷衛星探査計画「JUICE」では、2030年代にガニメデに周回機を投入する予定だ。地形の詳細な調査によって今回の研究結果が検証されるとともに、ガニメデの起源と進化について理解が深まることが期待される。
〈参照〉
- 神戸大学:木星衛星ガニメデ表面に太陽系最大の巨大クレーターを発見
- Icarus:A global system of furrows on Ganymede indicative of their creation in a single impact event 論文
〈関連リンク〉
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