太陽系「第9惑星」と類似?中心から遠く弾かれた系外惑星
【2020年12月16日 NASA】
系外惑星「HD 106906 b」は2013年にチリ・ラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡が撮影した画像から発見されたもので、みなみじゅうじ座の方向336光年彼方の連星系「HD 106906」の周りを回っている。惑星と連星との距離は1000億km以上もあり、太陽から地球までの距離の730倍以上、太陽から海王星までの25倍近くも離れている。質量は木星の11倍前後と推定されている。
米・カリフォルニア大学のMeiji Nguyenさんたちの研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡の14年分のアーカイブ画像を分析することでHD 106906 bのわずかな動きを調べ、一周するのに約1万5000年かかる軌道を回っていることを突き止めた。これだけ中心星から遠い所にある木星型惑星の動きを測定できたのは初めてのことだ。
HD 106906 bの軌道は楕円形である。連星HD 106906の回りには塵の円盤が見つかっているが、この円盤も非対称な形をしており、外を回るHD 106906 bによって変形した可能性が示唆される。また、惑星の軌道は連星および円盤の回転面に対して40度前後と大きく傾いている。
今でこそ極端な軌道を持つHD 106906 bだが、有力な仮説によれば、連星の回りで誕生したときは太陽から地球までの距離の3倍ほどと比較的近い位置にあったと考えられている。やがて連星を取り巻くガス円盤に引きずられて減速し、内側へと移動したが、連星の重力によって弾き飛ばされた。その結果、HD 106906 bの軌道は恒星間空間へと飛び出しそうなほど離心率の大きい(中心からの距離が極端に変化する)楕円になったが、たまたま連星系の近くを通っていた別の恒星の重力によって今の軌道にとどまったというのだ。実際に、HD 106906 bの安定に寄与した恒星の候補もいくつか見つかっている。
HD 106906 bの軌道は一見すると特異だが、太陽系でも似たような軌跡をたどる天体が存在する可能性をNguyenさんたちは指摘する。太陽系外縁天体の統計的調査を元に一部の天文学者が提唱している仮想の「第9惑星」だ(参照:「シミュレーションで推測、太陽系第9惑星存在の可能性」)。HD 106906系に存在する塵の円盤と同様、私たちの太陽系にも、海王星の外側に冥王星をはじめとした小天体が集まる「カイパーベルト」が広がっている。この太陽系外縁天体の一部が特徴的な軌道を持つことから、それらが太陽から地球の800倍も太陽から離れた「第9惑星」の影響を受けているとする仮説があるのだが、この状況はHD 106906 bとその内側にある円盤の偏りに類似するものだ。
HD 106906 bが存在する系の年齢は、たったの1500万歳だ。もし第9惑星が本当に存在しているとすれば、その形成年代は46億年という太陽系の歴史のごく初期に当たるのかもしれない。太陽系の仮想的な第9惑星には異論も多いが、遠く離れたHD 106906 bをさらに調べることで何らかの手がかりが得られるかもしれない。
〈参照〉
- NASA:Hubble Pins Down Weird Exoplanet with Far-Flung Orbit
- The Astronomical Journal:First detection of orbital motion for HD 106906 b: A wide-separation exoplanet on a Planet Nine-like orbit 論文
〈関連リンク〉
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