大小マゼラン雲を包み、星の材料を守るシールドを発見
【2022年10月4日 NASA】
大マゼラン雲と小マゼラン雲はどちらも、かつては小さな棒渦巻銀河だったと考えられるが、現在では天の川銀河に引き込まれて形が大きく崩れ、両銀河が通った後にはガスの尾が残されている。このような過去を経た大小マゼラン雲では星の材料となるガスが流出していてもおかしくないが、どちらの銀河でも活発な星形成が続いていて、天文学者たちは頭をひねっている。
米・コロラド大学のDhanesh Krishnaraoさんたちの研究チームは、大小マゼラン雲をまゆのように包む高温のガスが存在し、これが星の材料を保持していることを突き止めた。ガスは直接観測できないほど薄いが、特定の波長を吸収する性質があり、奥の天体からの光を観測することで発見できた。
今回見つかったような、銀河を包むプラズマ化した高温のガスは「銀河コロナ」と呼ばれ、天の川銀河でも見つかっている。その成因については、何十億年も前にガスが集まって銀河を形成したときの残りだという説がある。質量が小さい矮小銀河でも銀河コロナが検出されているので、大小マゼラン雲にも存在する可能性は以前から指摘されていた。
Krishnaraoさんたちは、NASAのハッブル宇宙望遠鏡と遠紫外線分光衛星「FUSE」の観測データから28個のクエーサーの紫外線スペクトルを調べた。選ばれたクエーサーは見かけ上大小マゼラン雲の近くにあるが、実際にははるか遠方にある天体だ。その光が私たちへ届くまでの間に、プラズマ化している炭素、酸素、ケイ素などに特定の波長が吸収されていることが紫外線スペクトルからわかった。なおかつ、大マゼラン雲に見かけ上近いほど吸収量は多く、それだけプラズマが濃いことも判明した。このことから、大小マゼラン雲を中心とした高温ガスのコロナが実在すると研究チームは結論づけている。
しかし、「コロナのガスはあまりに薄く、そこにないも同然です」(Krishnaraoさん)。それだけ薄いガスが、どうして大小マゼラン雲を守るシールドとなれるのだろうか。
「何かが銀河に入り込もうとするなら、最初にこの物質(銀河コロナ)を通過しなければいけないので、それが衝撃を吸収する役目を果たすわけです。また、コロナは最初に引きずり出される物質でもあります。コロナのごく一部を代償にすることで、銀河の内部で星の材料となるガスは守られるのです」(Krishnaraoさん)。
〈参照〉
- NASA:Hubble Detects Protective Shield Defending a Pair of Dwarf Galaxies
- Nature:Observations of a Magellanic Corona 論文
〈関連リンク〉
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