木星と土星の大型衛星系の違いは惑星誕生時の表面磁場が決めた
【2026年4月15日 国立天文台CfCA】
木星には100個以上の衛星が見つかっているが、その総質量のほとんどは、「ガリレオ衛星」と呼ばれる4つの大型衛星、イオ・エウロバ・ガニメデ・カリストが占めている。また、土星は300個近い衛星が発見されていて、その合計質量の95%以上を大型衛星のタイタンが占めている。
ガリレオ衛星は木星のすぐ近くを公転している一方で、タイタンは土星から少し離れたところにある。このように各ガス惑星の大型衛星は個数や軌道に違いがあるが、その違いが何によって決まっているのかはよくわかっていない。

(上)(左から)イオ・エウロパ・ガニメデ・カリスト。(下)土星とタイタン(提供:(上)NASA JPL、(下)NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)
ガス惑星が大気を獲得する際に惑星の周囲にはガスが円盤状に集まり、大型衛星はその円盤内で作られると考えられている。そこで、ガスの密度や温度、惑星の質量、惑星磁場などによって決まるガス円盤の構造や組成が、衛星の特徴に大きな影響を与えると考えられる。
京都大学の藤井悠里さんたちの研究チームは、形成初期の木星と土星の内部構造やガス円盤に働く基本的な物理メカニズムを取り入れた数値シミュレーションによって衛星形成の様子を調べ、惑星表面の磁場の強さが衛星系の違いを生み出した可能性を示す説を提唱した。鍵となるのは、ガス円盤の一部がプラズマ化し惑星の磁場に沿って流れる「磁気圏降着」という現象だ。
まず、各惑星の磁場について、内部では数倍程度の差しかない磁場強度が、惑星表面では木星のほうが約100倍も強くなることがわかった。木星の大きさは土星の1.2倍程度だが質量は3倍以上もあり、この差が表面磁場強度の差を生みだしている。
この表面磁場に加えて、ガス円盤構造の詳細な解析と衛星の形成・軌道移動の数値シミュレーションを行ったところ、磁気圏降着が起こるかどうかは惑星の磁場強度とガスの勢いによって決まること、この磁気圏降着の有無が円盤内で形成された衛星の軌道進化に大きな影響を与えることが明らかになった。
木星は磁場が強いため、磁気圏降着が起こった。ガス円盤内で形成された大型衛星は、ガスとの相互作用により木星に向かって軌道を移動するが、円盤の内縁で堰き止められる。その後、移動してきた衛星は互いの重力によって安定した軌道を持つようになり、ガス円盤にとどまって4つのガリレオ衛星として残った。
一方、磁場が弱い土星では、磁場がガスの勢いに負けて磁気圏降着が起こらなかった。その結果、土星の近くに移動してきた衛星は円盤にとどまれず、土星に飲み込まれてしまい、最終的には外側で形成されたタイタンだけが大型衛星としては残った、というシナリオだ。

木星と土星の周りの衛星形成の概念図(提供:堀安範(岡山大学))
藤井さんたちの説は、土星の周りに環の形成材料となる衛星が供給されるという状況と整合的であることも示されている。今回の成果は衛星系の多様性の理解をさらに深める一歩となった。

今回の研究から示された、木星と土星の大型衛星系形成の新シナリオのイメージイラスト。木星(手前)には磁場に沿ってガスが流れ込み、土星(右奥)には赤道面からガスが流れ込んでいる。土星の環はわかりやすさのために描いているが、実際にはまだ存在しない(提供:藤井悠里(L-INSIGHT/京都大学)、木下真一郎)
〈参照〉
- 国立天文台CfCA:木星と土星の衛星系の違いを決めるのは磁場
- Nature Astronomy:Different architecture of Jupiter and Saturn satellite systems from magnetospheric cavity formation 論文
〈関連リンク〉
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