星のゆりかごの中心で整列する放射状フィラメントの起源

このエントリーをはてなブックマークに追加
星形成領域に見られる「中心へ向かって放射状に並ぶ複数のフィラメント」という特徴的な構造が、くびれた磁場を持つ分子雲に高速の星間衝撃波がぶつかって形成されることが、数値シミュレーションで示された。

【2026年4月30日 国立天文台天文シミュレーションプロジェクト

様々な星形成領域で観測される、複数のフィラメントが中心の高密度領域へ向かって放射状に集まる「ハブ・フィラメント系分子雲」は、大質量星や星団が形成される重要な現場として注目されている。理論研究から、ハブ・フィラメント系分子雲は星間衝撃波と磁場の相互作用から形成されることが明らかになってきた。しかし、「中心へ向かって放射状に整って並ぶ複数のフィラメント」という特徴的な構造がどのような過程で作られるのかは未解明のままだった。

いっかくじゅう座R2の中心領域
フィラメント構造が見られる、2700光年彼方の巨大分子雲「いっかくじゅう座R2(Mon R2)」の中心領域(提供:ESA/Herschel/PACS/SPIRE/HOBYS Key Programme consortium

九州大学の野﨑信吾さんたちの研究チームは、実際の分子雲では磁場が一様ではなく、重力の影響で中央に向かってくびれた形をしていることに注目し、そのような分子雲に高速の星間衝撃波がぶつかったときに何が起こるのかを、国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイIII」を用いた3次元磁気流体数値シミュレーションによって詳しく調べた。

その結果、衝撃波の通過後に、衝撃波によって掃き集められたガスがくびれた磁場によって流れの向きを変えられ、中心方向に向かって細い流れに分裂しながら集まって、放射状のフィラメント構造が形成されることがわかった。形成されたフィラメントの細さや幅は、実際に観測されているハブ・フィラメント系分子雲の特徴とよく一致している。

シミュレーション結果、シミュレーションの概念
(上)いっかくじゅう座R2領域のハブ・フィラメント系分子雲。観測画像(左、中)とシミュレーション結果(右)の比較。(下)シミュレーションの概念図。くびれた磁場構造をもつ分子雲に星間衝撃波が衝突して通過すると、磁場に沿って分子雲ガスが細長く集まり、くびれの中心に向かってガスが流れる(bの青い矢印)ことが示された(提供:(上)名古屋大学リリース、(下)野﨑信吾(九州大学))

さらに、高密度のガスほど中心方向に大きな速度を持ち、周囲の低密度ガスは中心方向の速度が小さいという明瞭な違いが現れることも明らかになった。これは、分子雲全体のガスが一様に中心へ集まるのではなく、衝撃波によって形成された高密度のフィラメントが中心部への質量輸送を主に担っていることを示している。こうした構造と運動の違いは、衝撃波が曲がった磁場構造と相互作用することで特徴的なガスの流れが生じ、圧縮された層が分かれて複数の細長い構造が形成されることで生まれると考えられる。

「観測で見えている特徴的なガス構造が、どのような物理過程で作られるのかを示すことができました。放射状に並ぶ構造は一見すると特殊に見えますが、衝撃波と磁場の組み合わせによって自然に生まれることがわかりました」(野﨑さん)。

ハブ・フィラメント系分子雲の形成シミュレーション。星間衝撃波が分子雲を通過した後に、ハブ・フィラメント系分子雲に特徴的な、中心へ向かって放射状に並ぶ複数のフィラメントが発達する様子がわかる(提供:野﨑信吾)

近年の観測から、ハブ・フィラメント系分子雲には、非対称で複雑な形を示すものなど様々な形態が見つかっている。その違いが何によって決まるのかは、星形成研究における重要な課題だ。衝撃波の向きや強さ、分子雲の密度構造、磁場構造などの条件を系統的に調べることで、多様なハブ・フィラメント系分子雲を統計的に説明する形成シナリオが構築されることが期待される。

また、今回明らかになったような衝撃波起源のハブ・フィラメント系分子雲から、どのような大質量星や星団が生まれるのかを調べることも重要だ。分子雲の環境の違いが星や星団の性質に及ぼす影響、さらに大きなスケールで銀河の中での星や星団の形成という研究へとつながることも期待される。

関連記事