天の川銀河の円盤に向かって落ちる分子雲を発見
【2026年2月10日 名古屋大学】
私たちの天の川銀河は数千億個の星からなる円盤状の渦巻銀河で、銀河円盤の内部では、星間ガスが集まって新しい星が誕生している。この星形成活動は、これまで約100億年にわたって続いてきたことがわかっている。
しかし一方で、現在円盤部分に存在する星間ガスの量は、これまでと同じペースの星形成があと10億年ほど続くと尽きてしまうほどしかないことも知られている。そのため、過去に100億年間も星形成が続いてきた理由として、「銀河円盤の外側から何らかの形で継続的にガスが供給されている」という説が考えられている。ただし、星形成の材料となる分子雲は、これまでは主に銀河円盤沿いの領域で探査され、銀河面から離れた領域についてはあまり探査されてこなかった。

真上と真横から見た天の川銀河の想像図(提供:NASA Goddard Space Flight Center)
名古屋市科学館/名古屋大学の河野樹人さんたちの研究チームは、オーストラリアの口径22m「Mopra」電波望遠鏡を使った天の川の分子雲観測のデータから、じょうぎ座の方向に特徴的な分子雲を発見した。この分子雲は「おたまじゃくし」のような、銀河面から垂直な方向に尻尾のように伸びた構造(ヘッドテイル構造)を持っている。
河野さんたちは、チリにある「APEX」電波望遠鏡で得られている一酸化炭素分子の観測データを使って、今回見つかった分子雲の温度と密度を推定した。その結果、銀河円盤で見られる典型的な分子雲の温度が約10K(-263℃)であるのに対し、この分子雲は30~50Kとやや温度が高いことが明らかになった。分子雲を暖める放射源となる天体はそばに見当たらないため、この分子雲は銀河円盤に向かって落下しつつあり、円盤ガスとの衝突で衝撃圧縮を受けて温度が上昇していると河野さんたちは考えている。

(a)発見された2つの分子雲の電波画像。銀河面から垂直に伸びた構造を持つことがわかる。(b)一酸化炭素分子から放射される2種類の輝線の強度比の分布。強度比が大きな場所ほど温度と密度が高いことを示す(提供:名古屋大学リリース、以下同)
さらに、河野さんたちは位置天文衛星「ガイア」のデータを使い、この分子雲の付近では恒星が減光を受けて個数密度が減っていることを発見した。この領域での恒星の距離と減光量の関係から、今回見つかった分子雲の距離は8000±590光年で、2つの分子雲の質量はそれぞれ4800太陽質量・3500太陽質量と見積もられた。

(a)「ガイア」で得られた、今回の分子雲付近にある恒星の距離と減光量の関係。灰色で示した3つの領域が、今回の分子雲の距離に当てはまる可能性がある範囲。(b)「ガイア」が検出した、今回の分子雲付近にある恒星の個数密度。距離7400~13000光年の範囲にある恒星の密度を表す。黒い等高線は分子雲の空間分布
研究チームのメンバーである名古屋大学の早川貴敬さんと福井康雄さんは2024年に、銀河円盤に向かって落下しつつある「中速度雲」と呼ばれる中性水素ガス雲の重元素量を測定し、その大半が天の川銀河の外から来たものであることを立証している(参照:「天の川銀河に降る水素ガス雲は外からやって来た」)。
今回発見された分子雲も、視線速度は-35km/sで中速度雲に分類される。こうした結果から、河野さんたちは、天の川銀河を取り巻く銀河ハローから落下した中速度雲が円盤部で強く圧縮され、今回見つかったような落下分子雲が形づくられると考えている。このような落下分子雲が、銀河円盤の外から継続的にガスを供給する源となっているのかもしれない。

真横から見た天の川銀河と落下するガス(分子雲)の模式図。今回発見された2つの分子雲は、銀河ハローから円盤に向かって落下した可能性が考えられる
〈参照〉
- 名古屋大学:天の川銀河円盤に落下する星形成の材料“分子雲”を発見~天の川の進化の謎を解く大きな手がかり~
- PASJ:Head-tail molecular clouds falling onto the Milky Way disk 論文
〈関連リンク〉
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