鮮やかにとらえられた天の川銀河の最果ての星形成

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すばる望遠鏡が発見した天の川銀河の最果ての星形成領域を、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測して鮮明な画像を取得した。両望遠鏡がタッグを組んだ観測による興味深い成果だ。

【2024年9月19日 すばる望遠鏡Webb Space Telescope

天の川銀河の円盤の半径は約5万~7万光年とされているが、その最外縁部の環境は太陽系の周辺とは異なっている。とくに、星間物質に含まれる重元素の割合が太陽系近傍の1/5~1/10と少なく、誕生したばかりの天の川銀河の環境と似通っていると考えられている。

こうした始原的な環境下でどのように星が生まれるのか、太陽系近傍での星形成との違いはあるのかといったことを調べるため、すばる望遠鏡の赤外線観測装置「MOIRCS」と近赤外線分光撮像装置「IRCS」を用いた観測が10年以上前に行われ、天の川銀河の最外縁部に複数の星形成領域が発見された。これらの星形成領域のうち、天の川銀河の中心から6万~7万光年、太陽系からは4万~5万光年の距離にある「Digel Cloud(ディーゲル・クラウド)1、2」では、4つの若い星団内に生まれたばかりの多くの若い星がとらえられた。

今回、国立天文台の泉奈都子さんたちの研究チームは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ「NIRCam」と中間赤外線観測装置「MIRI」を用いて、それらの星団を観測した。すると、若い星団内で爆発的に星形成が進んでいて若い星が密集している様子や、恒星進化の最も初期段階にある天体(クラス0天体)の候補、若い星から噴き出した複数のジェット、星形成領域を取り囲む特徴的な星間ダストの構造(星雲)などが鮮明にとらえられた。また、主星団内に存在すると考えられていたサブ星団の存在も初めて確認された。

ディーゲル・クラウド2S
天の川銀河の最外縁部にある星形成領域「ディーゲル・クラウド2S」(擬似カラー)。生まれて間もない若い星々と、それらから放出された物質が複数のジェットとしてあちこちに伸びている様子(矢印)がわかる。左下のスケールバーは3光年に相当(提供:NASA, ESA, CSA, STScI, Michael Ressler (NASA-JPL))

「星団からあらゆる方向に複数のジェットが放たれていて、驚きと感動を覚えました。まるで花火のように、あちらこちらに光が飛び散っているかのようです」(NASAジェット推進研究所 Mike Resslerさん)。

泉さんたちは今後も天の川銀河の最外縁部を観測し、若い星を取り巻く円盤や様々な質量の星の相対的な存在量を調べたり、星から噴出するジェットの構造や運動の性質を詳細に検証したりしたいと考えている。こうした研究から、銀河の最外縁部に見られる星周円盤の寿命が太陽系近傍の星形成領域内のものに比べて短い理由や、特定の環境が種類の異なる星の形成過程に与える影響、誕生間もないころの天の川銀河で起こっていた星形成の様子などが明らかになっていくことが期待される。

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