巨大星団の種の形成には乱流運動が重要

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大質量の星団の種を形作る主な力は整列した磁場ではなく乱流運動であることが、アルマ望遠鏡の観測と数値シミュレーションで示された。

【2026年5月29日 アルマ望遠鏡

太陽の8倍程度以上の質量をもつ大質量星は、強烈な紫外線放射で周囲の星間環境に影響を与えたり、超新星爆発で銀河内に重元素を供給したりするなど、銀河の構造と進化を左右する重要な役割を果たす。こうした重要性の一方で、原始星団中でこのような大質量星を生み出しているメカニズムは、まだはっきりとしていない。

従来の理論では、強い磁場に沿ってガスが流れ、星形成領域中に磁場に垂直な方向に連なる密度構造が形成されることが示唆されてきた。分子ガス雲やガス塊(クランプ)といった大きなスケールで重力収縮している領域の観測からも、磁場優位の描像を支持する結果が得られている。しかし、個々の恒星や星団が形成されているような小さな空間スケールにまで、その磁場制御が及んでいるかは不明確だった。

中・南京大学のJunhao Liu(劉峻豪)さんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を用いて、天の川銀河内の大質量星形成領域30か所を対象とした磁場の大規模サーベイ観測を行った。

大質量星形成領域
大質量星形成領域の一例(さそり座方向のNGC 6334I領域)。ダストの放射の強度をカラーで表し、可視化された磁場の方向を線で表示している(提供:Liu et al. (2026))

すると、個別の恒星が生まれようとしている小さいスケールでは、大質量星の「種」となる高密度ガスの凝集(構造)が、局所的な磁場と平行に伸びているという統計的証拠が初めて得られた。大局的なスケールとは全く逆の傾向を示す結果だ。

Liuさんたちの数値シミュレーションによると、こうした磁力線に沿った配向は、ガスの運動超音速が乱流によって支配され、整列した磁場の影響が著しくかき乱されている明確な兆候だと推測される。

また、磁場方向とガスの回転の間に乱流が引き起こしたと思われる不整合も見つかった。この不整合が大質量の原始星円盤を保持し、中心星に質量を共有して成長を可能にしていることも明らかになった。

分子ガス塊の磁場分布の想像図
分子ガス塊の磁場分布の想像図。(左)広域。整列した磁場がガス塊を長軸に垂直な方向に貫いている。(右)局所域。磁場は極めて乱雑で、個々の凝集の長軸におよそ平行に走っている(提供:NAOJ)

「星形成における磁場と乱流は、宇宙における秩序と混沌の戦いです。大局的に見ると、整列した磁場が巨大分子雲やガス塊の構造を支配していることは明確ですが、一つ一つの星やその集団を作る場面では、磁場は乱雑な乱流との戦いに負けているのです」(Liuさん)。

「この発見によって、大質量星団の形成に関する私たちの理解は、磁場に支配された整然とした過程からカオスに導かれたものへと転換を余儀なくされます。この研究は、観測的な謎を解くだけでなく、恒星の種を生み出し育てる物理的過程を詳しく理解するための新たな理論・シミュレーション研究の活性化につながるとよいと思います」(Liuさん)。

「この研究は、従来の磁場制御星形成モデルに一石を投じました。アルマ望遠鏡だけが持つ高い空間分解能と高感度のコンビネーションで実現できたことです。新しい成果を生み出すには、数年にわたるデータ解析と大きな努力が必要でした。その先で、大質量星形成領域の小さな空間スケールで働いている物理を体系的に明らかにできました。小さいスケールでの磁場と乱流の振る舞いが、大きなスケールで観測されてきたものとは全く異なっていたとは、なんと面白いことでしょう」(東京大学 Patricio Sanhuezaさん)。

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