ペルセウス座銀河団の化学組成を説明する新しい恒星モデル
【2026年5月21日 カブリIPMU】
約2億4000万光年彼方のペルセウス座銀河団は、1000個以上の銀河の大集団だ。銀河団内を満たす高温ガスをX線で観測すると、多様な元素が存在していることがわかる。これらの元素は数十億年にわたって起こった数百億回ほどの超新星爆発が残した化学的な痕跡であり、恒星や銀河がどのように進化してきたかの情報が含まれている。

ペルセウス座銀河団(撮影:バークレーさん)
これまでの研究で、ペルセウス座銀河団におけるケイ素や硫黄などの組成比が、X線天文衛星「ひとみ(ASTRO-H)」による観測結果と理論的予測との間で大きく異なっていることが示されていた。
米・SUNYポリテクニック・インスティテュートのShing-Chi Leungさん、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構の野本憲一さんたちの研究チームは、大質量星および超新星爆発の新しいモデルを開発し、ペルセウス座銀河団のケイ素などの組成比を再現することに成功した。

ペルセウス座銀河団の化学組成。大質量星のモデルを今回のものに固定し、Ia型超新星の様々なモデル(各記号)と組み合わせて、化学組成を計算した。ケイ素(横軸が14のもの)からカルシウム(同20)ついては観測値(黒丸とエラーバー)によく一致している。ただしマンガン(25)の不足やニッケル(28)の過剰といった課題は残されている(提供:Leung et al. Paper II)
Leungさんたちはこの研究を拡張して、太陽の15~60倍という大質量星の質量と金属量を網羅した恒星モデルを作成した。これにより、ペルセウス座銀河団だけでなく広範に、超新星爆発によって銀河の化学組成がどのように進化するかを計算できるようにした。
さらにLeungさんたちは、極端なケースとして、超新星が双極方向にジェットを吹き出す形で爆発するという現象の影響を検討した。シミュレーションの結果、高エネルギーのジェットによって引き起こされる亜鉛の顕著な生成が、この種の現象の発生率を決定するうえで大きな証拠となりうることを突き止めた。

ジェット駆動型の超新星の模式図。大質量星の中心部に形成されたコンパクト天体から放出されたエネルギーが双極方向に外向きのバーストを引き起こす。非球形の爆発現象は複雑な構造の物質の噴出とそれに伴う元素合成につながる(提供: Image created by Shing-Chi Leung and Google Gemini Nano Banana Pro)

銀河規模の亜鉛生成におけるジェット駆動型超新星の新モデルの影響評価。天の川銀河内の恒星(背景のデータ点)の化学組成比を、ジェット駆動型超新星が全くない(水色)/全てこのタイプ(赤)、などのモデルでシミュレーションしている(提供: Leung et al. Paper III)
今後、X線分光撮像衛星「XRISM」による様々な銀河団の観測データなども解析に加え、モデルの改良や銀河、銀河団の化学組成の研究が進むことが期待される。
〈参照〉
- カブリIPMU:ペルセウス座銀河団の化学組成の起源を解明
- The Astrophysical Journal:論文
- Revisiting the Perseus Cluster. I. Resolving the Si/S/Ar/Ca Ratios by Stellar Convection
- Revisiting the Perseus Cluster. II. Metallicity-dependence of Massive Stars and Chemical Enrichment History
- Revisiting the Perseus Cluster. III. Role of Aspherical Explosions on Its Chemical Composition and Extension to Metal-poor Stars and Galaxies
〈関連リンク〉
- JAXA宇宙科学研究所:X線天文衛星「ひとみ」
- アストロアーツ 天体写真ギャラリー:ペルセウス座銀河団
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