ニュートリノの「変身」が左右する星の最期と超新星爆発

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超新星内部でニュートリノのフレーバーが短時間に入れ替わる「高速フレーバー変換」の影響を実装したコンピューターシミュレーションにより、軽い星ではニュートリノ振動が爆発を促進し、重い星ではその逆になるという結果が示された。

【2026年6月2日 早稲田大学

太陽質量の8倍を超える重い星が一生の最期に起こす超新星爆発は、素粒子であるニュートリノが内部の熱を外に運び周囲の物質に受け渡す「ニュートリノ加熱メカニズム」で引き起こされると考えられている。

ニュートリノには電子型、ミュー型、タウ型の3種類の「フレーバー」があり、「ニュートリノ振動」によって飛行中に変化する。超新星内部のような超高密度環境では、ニュートリノ同士の相互作用によってフレーバーが集合的に変換する「集団振動」が発生することが指摘されているが、加熱メカニズムに貢献するのは主に電子型のみなので、集団振動によってフレーバー組成が変化するとニュートリノから周囲の物質へのエネルギーの受け渡し方が変化し、超新星のダイナミクスを左右すると考えられている。

ニュートリノ振動の概念図
ニュートリノ振動の概念図。異なる質量を持つ3種のフレーバーは、それぞれ異なる振動数を持つ波として空間を伝播する。すると、ニュートリノのフレーバーが質量の決まった波の重ね合わせとなり、ニュートリノが空間を飛ぶ間に波の位相が変化して、フレーバーの種類が移り変わる(提供:東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

早稲田大学の赤穂龍一郎さんたちの研究チームはスーパーコンピューター「富岳」を用いて、ニュートリノ集団振動、そのなかでもとくに極めて短時間でフレーバーが変わる「高速フレーバー変換(FFC; Fast Flavor Conversion)」が超新星爆発に及ぼす影響を考慮したシミュレーションを行った。

その結果、軽くて爆発が成功する星ではFFCによって爆発が促進される一方、重くて爆発が失敗する星では爆発が抑制されるという、影響の二極化が明らかになった。要因は、電子型と重レプトン型(ミュー・タウ)ニュートリノの放射のされ方が、軽い星と重い星で違うことだという。

軽い星は質量降着率が低く、それによって駆動される電子型ニュートリノの放出が弱く(光度・平均エネルギーが低く)なる。その状態でFFCが起こると、重レプトン型ニュートリノから電子型ニュートリノへの変換が卓越するが、重レプトン型の方が電子型よりも平均エネルギーが高いため、電子型の平均エネルギーがつられて上がり、ニュートリノ加熱率が増加して爆発が促進される。

反対に重い星は質量降着率が高く、元々の電子型ニュートリノの放出が強い状態にある。そのため、FFCが発生すると電子型ニュートリノから重レプトン型ニュートリノへの変換が卓越し、軽い星とは逆にニュートリノ加熱率が減少して爆発が抑制されてしまう。

比エントロピーの分布
比エントロピー(衝撃波を膨張させる勢いの指標)の分布。高速フレーバー変換あり(右)では変換の発生領域を通ったニュートリノの平均エネルギーが高まり、ニュートリノ加熱率が上昇して衝撃波が広がっている(提供:早稲田大学リリース)

また、先行研究で用いられてきた近似的手法ではFFCの出現場所の大部分を見逃してしまうことや、FFCが本来発生しない場所で偽判定してしまうことも示された。FFCの影響を調べるには、今回の研究のような近似に頼らない手法(ボルツマン輸送シミュレーション)が不可欠であるという。

ニュートリノ集団振動の影響を浮き彫りにした今回の成果は、謎の多い超新星爆発のメカニズムの理解前進に大きく貢献するだろう。

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