系外惑星が受ける、低温小質量星からの脅威
【2017年7月6日 RAS】
系外惑星の軌道が、液体の水が存在できる範囲(ハビタブルゾーン)にあるとき、その惑星には(地球に見られるような)生命を育むのに適した環境が存在すると考えられてきた。中心星が低温で小質量の(軽い)場合、ハビタブルゾーンは太陽系のそれ(地球軌道付近)よりも中心星に近い範囲になる。
こうした低温で軽い星は磁場が強く、コロナ質量放出(CME)が激しくなる。CMEとは恒星の表面で磁場のエネルギーが突然解放され、プラズマの塊が放出される爆発的な現象だ。太陽でもたびたび発生しており、人工衛星や地上の電子機器に悪影響を及ぼすことがある。
このCMEが惑星にぶつかると、惑星を守っている磁気圏が圧縮される。CMEが極端に強い場合には、その圧力で磁気圏が縮小し、惑星大気が露出し、さらには惑星から大気が逃げ出すことになる。すると、惑星の表面やそこに存在する生物は、中心星からの有害なX線にさらされる。ハビタブルゾーンが中心星に近ければ、その影響はさらに大きくなる。
NASAゴダード宇宙飛行センターのChristina Kayさんたちの研究チームは、系外惑星が見つかっている低温の星「ペガスス座V374」に太陽系内のCMEに関する情報を当てはめ、こうした系で惑星にどのような影響があるかを調べた。
この系で発生すると考えられる理論上のCMEをモデル化して調べたところ、中心星の強い磁場によってCMEが中心星の電流シート(磁場の強さが最小になる面)まで押され、惑星に対するCMEの影響が甚大になることが示された。このCMEから系外惑星の大気を守るためには、惑星の磁場は地球の10倍から数千倍も強い必要がある。「太陽の場合よりも強力なCMEがより頻繁に起こるだろうとは考えていましたが、CMEがどこまで届くかは予想外でした」(Kayさん)。
「低温の星は宇宙で最も多く存在する天体と考えられていて、その周囲に存在する系外惑星は地球外生命探しの対象として最適だと思われています。しかし今回の結果からわかるように、低温の星の『ハビタブルゾーン』は、生命にとって危険な場所でもあるのです」(共同研究者 Marc Kornbleuthさん)。
〈参照〉
- RAS News & Press:Under pressure - extreme atmosphere stripping may limit exoplanets' habitability
- The Astrophysical Journal:Probability of CME impact on exoplanets orbiting M dwarfs and solar-like stars 論文
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