太陽系に最も近い恒星に地球サイズの惑星を発見
【2016年8月26日 ヨーロッパ南天天文台】
わたしたちから4.2光年の距離に位置する赤色矮星「プロキシマケンタウリ」(以降「プロキシマ」)は、太陽系から最も近い恒星だ。ケンタウルス座に位置する11等級の星で、0等級のリギルケンタウルスA、1等級のリギルケンタウルスBと共に三重星の連星系を構成しており、AとBからは0.2光年離れている。
2013年、このプロキシマの周囲を公転する系外惑星の存在が示唆されたが、確固たる検出には至らなかった。そこで今年の前半に、ヨーロッパ南天天文台のチリ・ラシーヤ観測所をはじめ世界中の望遠鏡を用いた「Pale Red Dot(微かな赤い点)」と呼ばれる同時観測キャンペーンが行われた(1990年に探査機「ボイジャー1号」が60億km彼方から撮影した地球が「Pale Blue dot」と呼ばれることと、プロキシマが赤色矮星であることからのネーミングである)。
Pale Red Dotキャンペーンで得られたデータと以前の観測結果を合わせたところ、プロキシマが11.2日の周期で地球に対して時速5kmで近づいたり遠ざかったりする動きが検出された。この動きは、プロキシマの周りを公転する惑星の重力によって星がふらつく様子をとらえたものと考えられる。「ドップラー法」と呼ばれるこの手法により、多数の惑星が見つかっている。
そして観測結果が確かに惑星の存在によるものであること等が慎重に確かめられ、プロキシマに地球の1.3倍の質量を持つ惑星が存在することが明らかになった。
惑星「プロキシマb」は中心星プロキシマから約700万kmの距離に位置している。これは、太陽から水星までの12%、太陽から地球までの5%に過ぎない至近距離だ。その一方で、プロキシマは太陽よりもはるかに暗い星であるため熱エネルギー放射量も少ない。結果として、プロキシマbはプロキシマのハビタブルゾーン(惑星表面に液体の水が存在でき、生命が存在可能な範囲)に位置しているようだ。ただし、プロキシマからの紫外線やX線フレアの影響を強く受けている可能性も高く、ハビタブルゾーンにあっても過酷な環境と想像される。
※なお、2012年にはリギルケンタウルスBに系外惑星が発見されたと報じられた(参照:アストロアーツニュース「太陽系から一番近い星に系外惑星を発見」、正確には「一番近い星系」)。しかし確定には至っておらず、取り下げにはなっていないものの存在は疑わしいとされている。
〈参照〉
- ヨーロッパ南天天文台: Planet Found in Habitable Zone Around Nearest Star
- Nature: A terrestrial planet candidate in a temperate orbit around Proxima Centauri 論文PDF
〈関連リンク〉
- ヨーロッパ南天天文台(ESO): http://www.eso.org/
- The Extrasolar Planets Encyclopaedia: http://exoplanet.eu/
〈関連ニュース〉
- 2016/08/22 - 惑星に生命が存在できるための、距離以外の条件
- 2016/07/25 - 地球サイズの系外惑星の大気を初観測
- 2016/05/09 - 超低温の矮星の周りに、生命が存在しうる地球サイズの惑星3つを発見
- 2016/04/06 - 太陽系近傍で2例目、赤色矮星を回る新たなスーパーアース
- 2016/02/09 - 地球に似た系外惑星の内部構造は、やはり地球と似ている
- 2015/10/23 - 地球は先駆者、生命に適した惑星9割の誕生はこれから
- 2015/09/11 - 生命がいなくても酸素が豊富な地球型惑星は存在しうる
- 2015/08/10 - 地球から21光年先のスーパーアース
- 2015/07/27 - 太陽と同タイプの恒星のハビタブルゾーンに地球サイズの系外惑星
- 2014/12/02 - 40光年彼方の“太陽”を横切るスーパーアース、地上から観測
- 2014/04/18 - ハビタブルゾーンにある地球サイズの惑星を初めて発見
- 2012/10/17 - 太陽系から一番近い星に系外惑星を発見 リギルケンタウルスBの系外惑星
関連記事
- 2024/11/18 超高密度スーパーアースとその形成過程の手がかりとなり得る外側の惑星を発見
- 2024/09/11 ホットジュピターの内側で、公転が大きく変動するミニ海王星
- 2024/07/29 「灼熱の土星」型の系外惑星で大気から水蒸気の証拠を検出
- 2024/06/18 想定外の軌道を持つ「ミニ海王星」を発見
- 2024/05/30 ローマン宇宙望遠鏡の系外惑星観測用コロナグラフが準備完了
- 2024/05/27 宇宙生命探査の鍵となる「太陽系外の金星」を発見
- 2024/05/21 超低温の赤色矮星で2例目、地球サイズの系外惑星を発見
- 2024/04/18 植物の排熱が地球や系外惑星に及ぼす影響
- 2023/12/05 共鳴し合う6つ子の系外惑星
- 2023/08/02 蒸発する惑星が引き起こす「しゃっくり」
- 2023/07/28 巨大惑星に収縮する前の塊、若い星の周囲で発見
- 2023/07/27 次々見つかる浮遊惑星、天の川銀河に1兆個以上存在か
- 2023/07/14 公式ブログ:ペガスス座51番星系で新星座を考える
- 2023/05/25 火山活動の可能性がある地球サイズの系外惑星
- 2023/04/21 アストロメトリと直接撮像の合わせ技で系外惑星を発見
- 2023/04/04 「ケプラー」発見の天体で最も近い地球型惑星
- 2023/01/17 光合成の蛍光から系外惑星の生命を探す
- 2022/12/22 低密度の系外惑星、「煮えたぎる海洋惑星」か
- 2022/12/20 地球型惑星の大気は強い紫外線に負けない
- 2022/09/13 低温星のハビタブルゾーンで地球型惑星を発見