宇宙論の標準モデルで説明できない衛星銀河の運動
【2018年2月7日 カリフォルニア大学アーバイン校】
天の川銀河やアンドロメダ座大銀河(M31)などの周囲には、質量がこれらの1/10から1/100ほどしかない矮小銀河が多く存在しており、「衛星銀河」として母銀河の周りを周回している。
現在広く受け入れられている「ΛCDMモデル(宇宙項のある冷たいダークマターモデル)」と呼ばれる宇宙論モデルに基づいた銀河形成理論によれば、矮小銀河のような小さい恒星系の運動方向は母銀河によってランダムに曲げられるため、衛星銀河は母銀河の周囲にほぼ球状に分布し、軌道の方向もばらばらになるとされてきた。
しかし、現実の衛星銀河の運動を詳しく観測して理論と比較した研究はあまり多くない。地球から遠い銀河では衛星銀河の見かけの動きも小さいため、運動の方向を測定するのが難しいためだ。これまで、衛星銀河の運動が詳しくわかっているのは天の川銀河と、230万光年の近距離にあるアンドロメダ座大銀河の2つに限られていた。これら2つの銀河では衛星銀河の運動はランダムではなく、多くの衛星銀河がほぼ同じ平面を同じ方向に周回していることが知られている。
スイス・バーゼル大学のOliver Müllerさんたちの研究チームは、地球から1300万光年の距離にある巨大楕円銀河「ケンタウルス座A電波源(NGC 5128)」について、過去の観測データの中から16個の衛星銀河のデータを見つけ、その視線方向の速度を調べた。その結果、16個の衛星銀河のうち14個がやはり共通の運動をしていて、母銀河の周りを同じ平面内で動いていることがわかった。天の川銀河やM31が属する「局部銀河群」の外でこのような衛星銀河の運動が見つかったのは初めてのことだ。
天の川銀河やM31、今回のケンタウルス座A電波源の衛星銀河がランダムでなく揃った運動をしているという事実は、広く用いられている宇宙論モデルやシミュレーションの結果とは矛盾している。モデルに基づく予想では、天の川銀河近くの銀河で衛星銀河がこのような運動パターンを示す例はわずか0.5%程度にすぎないと考えられてきた。
「銀河とその衛星銀河の分布を説明するとされてきた宇宙論モデルや数値シミュレーションの結果が本当に正しいのかという点に疑問を投げかける、重要な発見です。シミュレーションに何か大事な要素が抜けているか、あるいは基本としている理論が間違っているのかもしれません。あるいは、別の宇宙論モデルを検討すべきであることを示しているのかもしれません」(米・カリフォルニア大学アーバイン校 Marcel Pawlowskiさん)。
〈参照〉
- University of California, Irvine:Distant galaxy group contradicts common cosmological models, simulations
- University of Basel:Astronomy: a Rotating System of Satellite Galaxies Raises Questions
- Australian National University:New study challenges popular theory about dwarf galaxies
- Science:A whirling plane of satellite galaxies around Centaurus A challenges cold dark matter cosmology 論文
- アストロアーツ 投稿画像ギャラリー:ケンタウルス座A電波源
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