天の川銀河の取り巻きは、少なくないが偏っている

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天の川銀河と似た質量の銀河との比較から、天の川銀河は衛星銀河の数が特段少ないわけではないが、分布は偏っていることが示された。

【2022年9月5日 すばる望遠鏡

天の川銀河の周りを公転する衛星銀河は、現在までに50個以上検出されている。この数は、現在の標準的な宇宙論による銀河形成理論と比べると一桁以上少ない。また、観測される衛星銀河の分布には偏りがあり、これも宇宙論では説明できない。

私たちの天の川銀河は特異な銀河なのだろうか、それとも現在の宇宙論に問題があるのだろうか。この問題を検証するために、国立天文台の梨本真志さん(現・東京大学)たちの研究チームは、天の川銀河と同程度の質量を持つ銀河を観測して、衛星銀河の数と分布を調べた。

NGC 3338
観測対象の一つ、NGC 3338。しし座の方向約7600万光年先の渦巻銀河で、質量が天の川銀河と同じくらいと考えられている(提供:国立天文台、以下同)

選ばれた銀河は9つで、地球から約5000万~8000万光年の距離にある。すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」を使って、それぞれの銀河について衛星銀河が分布する領域をくまなく撮影し、画像の中から無関係な背景の銀河が映り込んだと思われるものを除外していった結果、確実に衛星銀河と見なせる天体が51個(候補まで含めると93個)検出された。

銀河によって衛星銀河の数にばらつきはあったが、暗すぎる衛星銀河は見えないことを考慮すれば、9つの銀河を取り巻く衛星銀河の数は天の川銀河と同程度であることがわかった。つまり、天の川銀河は特段に衛星銀河が少ないわけではないようだ。

一方で、9つの銀河を取り巻く衛星銀河はほぼ等方的に分布していた。天の川銀河では衛星銀河の多くが同一平面上に分布しているので、この点では天の川銀河は典型的な銀河ではないのかもしれない。

「HSCが誇る広視野・高感度の特性を活かすことで、発見されずにいた淡い衛星銀河の美しい姿を一度にとらえることができました。新たに検出された近傍銀河の衛星銀河は、衛星銀河に関する諸問題を統計的に検証するために貴重な情報です。今回の観測では衛星銀河かどうかはっきりしない天体もあり、今後すばる望遠鏡の「超広視野多天体分光器」による追観測によって同定していくことが期待されます」(梨本さん)。

検出された衛星銀河の一部
検出された衛星銀河の一部。多くの衛星銀河は淡く広がっている。画像クリックで拡大表示

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