2024年の木星は11月ごろから観察シーズンを迎え、2025年4月ごろまで見やすい状態です。マイナス2.5等級前後ととても明るいのでよく目立ち、街中でも簡単に見つけられます。
木星を観察すると、周りを巡るガリレオ衛星が見えます。日々並び方が変化する様子は見ものです。木星表面の縞模様や大赤斑も見たり撮ったりしてみましょう。
目次
木星を見つけよう
夜半の明星
「夜半の明星」とも呼ばれる木星は、とても明るく光る惑星です。建物などに遮られなければ、街明かりがあるようなところでも簡単に見つかります。
今シーズンの木星は「おうし座」の領域にあります。10月9日から2月4日までが逆行期間で、この間の12月8日に衝を迎えます。宵空で見やすいのは11~3月ごろでしょう。
木星に関する現象カレンダー
日付 | 現象 | 備考 |
---|---|---|
12月 8日 | 衝(しょう) (» 解説) | 太陽の反対に来る(日の入りのころ昇り、深夜に南に見え、日の出のころ沈む) |
12月14日 | 月(月齢13/14)と並ぶ | 宵~翌15日明け方 |
1月11日 | 月(月齢11)と並ぶ | 未明 |
12月中旬 ~3月下旬 |
おうし座の1等星アルデバランと並ぶ | 夕方~未明 最接近1月30日ごろ |
12月下旬 ~3月中旬 |
おうし座の散開星団Mel 25ヒヤデス星団と並ぶ | 夕方~未明 最接近2月2日ごろ |
2月 4日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を西→東に動く(順行する)ようになる |
2月 7日 | 月(月齢9)と並ぶ | 夕方~宵 |
2月27日 | 東矩(とうく) | 太陽から90度東に離れる(日の入りのころ南に見え、深夜に沈む) 日付は赤道座標系(黄道座標系では3月3日) |
3月 6日 | 月(月齢6/7)と並ぶ | 夕方~翌7日未明 |
4月30日 | 細い月(月齢3)と並ぶ | 宵 |
4月下旬 ~5月中旬 |
おうし座の超新星残骸M1かに星雲と大接近 | 夕方~宵 最接近5月15日ごろ |
5月28日 | 細い月(月齢1)と並ぶ | 夕方 |
6月上旬 | 水星と接近 | 夕方 最接近6月8日ごろ |
6月25日 | 合 | 太陽と同じ方向に来る(見えない) |
(過去の現象) | ||
9月10日 | 西矩(せいく) | 太陽から90度西に離れる(深夜に昇り、日の出のころ南に見える) 日付は赤道座標系(黄道座標系では12日) |
9月23日 | 月(月齢21/22)と並ぶ | 深夜~翌24日明け方 |
9月上旬 ~11月中旬 |
おうし座の超新星残骸M1かに星雲と接近 | 深夜~明け方 最接近10月9日ごろ |
10月 9日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を東→西に動く(逆行する)ようになる |
10月21日 | 月(月齢19)と並ぶ | 宵~深夜 |
11月17日 | 月(月齢16)と並ぶ | 宵~翌18日明け方 |
木星は2025年5月下旬以降、太陽に近づいて見えにくくなり、6月下旬に合(太陽と同じ方向になること)を迎えて見えなくなります。明け方の東の空に見えるようになるのは7月下旬ごろからです。
モバイルアプリを活用
火星や土星も見よう
ガリレオ衛星や縞模様を観察しよう
ガリレオ衛星
木星には90個以上の衛星が見つかっています。そのうちイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストは大型の衛星で、双眼鏡や小型望遠鏡でも存在がわかります。1610年にガリレオが発見したことから、この4つはとくにガリレオ衛星とも呼ばれています。
ガリレオ衛星のうち、一番木星に近いイオはわずか2日弱で木星の周りを一回りします。一番外側のカリストも一回りするには約17日ほどしかかかりません。このため、ガリレオ衛星の位置は目まぐるしく変化します。木星の裏に回ったり木星の影に入ったりして、見えなくなっていることもあります。
衛星の動きをシミュレーション動画にしたので、観察の際の参考にしてください(I:イオ/II:エウロパ/III:ガニメデ/IV:カリスト)。図は上が北になっています。天体望遠鏡では像が回転していることが多いので見比べるときには注意しましょう。
縞模様と大赤斑
天体望遠鏡で木星を見ると、縞模様があるのがわかります。口径5cm程度の小型望遠鏡でも、目立つ2本を確認できるでしょう。
口径が大きくなると、さらに多くの縞模様が見えてきます。気流が安定しているとき(風がないとき)や木星が南の空に見えるとき(昇った直後や沈む直前ではないタイミング)のほうが条件良く見えるでしょう。
さらに、大赤斑という模様も見えるかもしれません。大赤斑は直径が地球数個分もある、巨大な台風のようなものです。木星は約10時間で自転しているので、大赤斑が裏にまわっていることもあります。シミュレーション動画やステラナビゲータを参考にして、タイミングを見計らって観察するようにしましょう。
公開天文台や科学館などで開催される観望会(観察会、観測会)では、大きい望遠鏡で木星を見ることができます。お近くのイベント情報は、全国プラネタリウム&公開天文台情報ページ「パオナビ」で検索してみてください。
木星を撮影してみよう
カラーCMOSカメラを天体望遠鏡に接続して惑星を動画撮影し、その中から写りの良いフレームだけを選んで多数枚コンポジットすると、精緻で滑らかな惑星像を得ることができます。天体画像処理ソフトウェア「ステライメージ」を使うと、動画からのコンポジットはもちろん、カラーバランス調整やディテール強調まで簡単かつ詳細に行えます。画像を「作品」に仕上げてみましょう。
オンラインショップ
アストロアーツのオンラインショップでは、天体望遠鏡や双眼鏡を多数取り扱っています。縞模様やガリレオ衛星を自分の目で観察してみましょう。ライトやクッションなどの便利グッズ、太陽系のことが詳しくわかる書籍などもあります。
木星に関するマメ知識
太陽系最大の惑星
木星は大きさ(赤道部分の直径)が地球の約11倍、質量が地球の約320倍ある、太陽系の惑星の中で最大の天体です。主成分は水素やヘリウムといった気体で、巨大ガス惑星に分類されます。また、約10時間で自転しており、これは太陽系の惑星の中で最速です。
表面の模様
特徴的な表面の模様は、木星の雲を見ているものです。雲は主にアンモニアやその化合物でできていますが、少量の他の物質が太陽光と反応することでオレンジ色に見えます。明るい部分(帯)は上昇気流の部分、暗い部分(縞)は下降気流の部分で、その中に見える大赤斑や白斑は木星の嵐です。まれに、木星に小天体が衝突した際の閃光や、天体衝突後の痕跡の模様が、地上や宇宙望遠鏡で観測されることもあります。
また、非常に強い磁場を持っているため、北極や南極の周辺でオーロラが発生することもあります。
12年で1周
木星の公転周期は約12年で、地球からはおよそ1年ごとに黄道12星座(いわゆる「星占いの星座」)を1つずつ移っていくように見えます。干支の12年で天球上を一巡することから、中国では「歳星(さいせい)」とも呼ばれます。
木星探査
1970年代に「パイオニア計画」や「ボイジャー計画」によって探査機が木星に接近し、表面の詳細な観測や環の発見、新たな衛星の発見などの成果を挙げました。
1989年に打ち上げられた探査機「ガリレオ」は、史上初めて木星を周回しながら観測を行いました。ガリレオは1995年から2003年にかけて木星やその衛星を観測し、数々の美しい画像や科学データをもたらしました。
土星探査機「カッシーニ」や冥王星・太陽系外縁天体探査機「ニューホライズンズ」も、それぞれのメインターゲットへと向かう途中に木星を観測しています。
2011年8月に打ち上げられ2016年7月に木星に到着した探査機「ジュノー」は、木星の北極と南極を通る楕円軌道を周回しながら、木星の大気や磁場、内部の様子などを調べています。
2023年4月には探査機「JUICE」が打ち上げられました。2031年に木星系に到着し、ガリレオ衛星のうち氷衛星であるエウロパ、ガニメデ、カリストを接近飛行したり周回したりして調査します。JUICE計画には日本も参加しています。
また、ハッブル宇宙望遠鏡によってエウロパに間欠泉らしいものがとらえられたり、日本の科学衛星「ひさき」が木星磁気圏の観測を行ったりするなど、地上の天体望遠鏡や地球周回の衛星からの観測も活発に行われています。