アルマ望遠鏡が解き明かす、銀河中心ブラックホールの活動

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【2013年10月18日 アルマ望遠鏡

3000万年前の銀河と、110億年前の銀河。それぞれの中心にあるブラックホールから噴き出すジェットを、2つの研究チームがアルマ望遠鏡で観測した。サブミリ波で詳しく調べることで、ブラックホールの活動が銀河の進化に与える影響の一端が明らかになってきそうだ。


NGC 1433の中心部で渦巻く分子ガス

NGC 1433と、その中心部で渦巻く分子ガス(青:ハッブル宇宙望遠鏡、赤・黄:アルマ望遠鏡)。クリックで拡大(提供:ALMA(ESO/NAOJ/NRAO)/NASA/ESA/F.Combes)

PKS 1830-211のブラックホール周囲の電波強度

銀河PKS 1830-211のブラックホール周囲の、電波で見た明るさ。重力レンズ効果によりジェットで明るい部分が2つの像として見えている。リリース元の動画で変化のようすを見ることができる(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/I. Martí-Vidal/MERLIN(University of Manchester, Jodrell Bank Observatory, STFC)

ほぼすべての銀河の中心には、太陽の数十億倍にもなるとても重いブラックホールが存在する。ひじょうに遠方にある、つまり宇宙の歴史においてはるか昔の銀河では、こうしたブラックホールは周囲の物質を大量に吸い込むと同時に大きなエネルギーを放っていた。高温に熱せられたガスが明るく輝き、一部のガスがジェットとして激しく噴き出すなど、とても活発な活動を見せていたのだ。

だが現在に近くなるにつれ、こうしたブラックホールがガスを吸い込むペースは落ちており、昔ほどの活発さはない。

フランソワーズ・コムズさん(パリ天文台)らは、近代の宇宙にあって比較的穏やかな銀河中心ブラックホールを観測した。対象は、とけい座の方向およそ3000万光年彼方の棒渦巻銀河NGC 1433だ。アルマ望遠鏡で観測したところ、ブラックホールに物質が流れ込むようすを示す分子ガスの渦巻き構造や、わずか150光年の長さのジェットが見つかった(画像1枚目)。銀河中心でこれほど小さい分子ガスジェットが見つかったのは初めてのことだ。

星の材料となる分子ガスがジェットとして銀河中心から放出されると、その周辺では星が作られにくくなる。NGC 1433中心にあるような穏やかなブラックホールにも分子ガスジェットが見つかったことで、ブラックホールが銀河の進化に与える影響の一端が明らかになった。

アルマ望遠鏡を用いた銀河中心ブラックホールの研究発表をもう1つ。こちらは、とても遠くの銀河で激しい活動を見せるブラックホールだ。

イヴァン・マルティ‐ヴィダルさん(スウェーデン・チャルマース技術大学オンサラ天文台)らは、110億光年もの彼方にあるいて座方向の銀河PKS 1830-211の中心ブラックホールを別の目的で観測していた。すると偶然にも、ジェットの根元に大量の物質が流入してジェットが瞬間的に激しくなるようすがとらえられた(画像2枚目)。

アルマで見えるのは、サブミリ波(電波の一種)での明るさである。ほかの波長ではどうかということでガンマ線観測衛星「フェルミ」のデータを調べたところ、ガンマ線でもはっきりとした変化の兆候がとらえられていた。ブラックホールジェットから発せられるガンマ線とサブミリ波で、これほどはっきりと連動的な変化が見られたのは初めてのことだという。

今回取り上げた2つの研究成果は、近傍と遠方の超巨大ブラックホールから噴き出すジェットの観測研究において、アルマ望遠鏡が確かな一歩を踏み出したということを示している。

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