124億光年かなた、最遠のX線ジェット
【2012年12月12日 JAXA/NASA】
124億光年かなたの超巨大質量ブラックホールから放射されているX線ジェットを、NASAの天文衛星「チャンドラ」が検出した。観測史上もっとも遠くで見つかったX線ジェットであり、初期宇宙の爆発的な活動の理解へとつながる。
米国科学アカデミーのTeddy CheungさんらはX線天文衛星「チャンドラ」による観測から、約124億光年かなたという遠方宇宙にあるクエーサー「GB1428+4217」(以下GB1428)から噴き出すX線ジェットを発見した。同じ研究チームが発見した122億光年と120億光年の距離の記録を上回る最遠記録となる。初期宇宙におけるX線ジェットはほとんど観測例がないため、これは貴重な発見だ。
クエーサーは、遠方銀河の中心にある大質量ブラックホールが高速で物質を飲み込む際、放出されたエネルギーが強い放射として見えている(つまり、極めて明るく見える)天体だ。噴き出すジェットに含まれる高速の電子が、ビッグバンの名残として宇宙に広がるマイクロ波背景放射の光子にぶつかると、より高エネルギーのX線に変換される「逆コンプトン散乱」と呼ばれる現象が起こる。
「X線の強さはブラックホールから電子が放出される速度によります。今回のようなジェットの発見から、ビッグバンから間もない初期宇宙における銀河とその中心の巨大質量ブラックホールの環境について、手がかりを得ることができるのです」(JAXAインターナショナルトップヤングフェローのLukasz Stawarzさん)。
GB1428のジェットの長さは少なくとも23万光年、銀河系の直径のおよそ2倍あると考えられる。クエーサーの片側のみにジェットが観測されていることなどから、ほぼ地球に向かう方向で噴き出していると見られる。
また、世界各地の電波望遠鏡を組み合わせるVLBI観測から、GB1428のジェットのより詳細な姿が観測され、X線ジェットと同じ方向に長さ1900光年ほどの小規模なジェットが存在していることも明らかになっている。