アルマやケックIIで観測、衝突銀河のベストショット
【2014年8月28日 ケック天文台/アメリカ国立電波天文台】
約70億年前の宇宙で起こっていた銀河同士の衝突のようすをハッブル宇宙望遠鏡やアルマ望遠鏡などが観測し、データを合成して作られたベストショットとも呼べる画像が公開された。手前に位置する銀河による重力レンズ効果のおかげで、はるか遠くの衝突銀河を詳細に観測できる。
おとめ座の方向に浮かぶ天体H1429-0028は、今から約70億年前の宇宙で起こった銀河衝突の現場である。「H-ATLAS」と呼ばれるサーベイによって発見された後、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)、ケックII望遠鏡、アルマ望遠鏡、カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(JVLA)、超大型電波干渉計(VLA)といった望遠鏡で詳細な観測が行われ、それぞれのデータを重ね合わせることにより、遠方の衝突銀河のものとしてはこれまでにないベストショットが作られた。
H1429-0028と地球との間には別の銀河が存在する。この銀河の巨大な質量によって重力がレンズのような役割を果たす重力レンズ効果のおかげで、遠方にあるH1429-0028を詳しく調べることができた。
HSTとケックII望遠鏡は、レンズとなった手前の銀河の周りを取り巻く光のリングの存在を明らかにした(図1枚目)。また、手前の銀河が、円盤を真横から見た位置関係になっているようすもとらえられた。さらに、H1429-0028が1つではなく2つの銀河であることも、HSTとケックIIの観測から確かめられた。
アルマ望遠鏡では、銀河内での星形成のメカニズムや物質の動きを調べる手立てとなる一酸化炭素を追跡できる。その観測からはH1429-0028が銀河衝突の真っ最中で、1年に数百個もの星を生みだしていることがわかった。からす座にある有名な衝突銀河のアンテナ銀河(触角銀河)では1年で太陽数十個分の星が誕生しており、それと比べるとはるかに大きな星形成率だ。また、衝突中の一方が回転している兆候も見られ、この銀河は衝突前は円盤銀河と考えられることも示された。