MINERVA-II1がとらえたリュウグウの新画像
【2018年10月1日 JAXA】
9月21日13時05分(日本時、以下同)に小惑星探査機「はやぶさ2」から分離された「MINERVA-II1」の2機のローバー「Rover-1A」「同1B」は、小惑星リュウグウの表面をホップして移動しながら正常に動作しているもようだ。
今回新たに、分離の2日後となる9月23日(Sol.7)に両ローバーが撮影した画像が公開された。砂利のような岩石がリュウグウの表面を覆っている様子がわかる。カメラの画角から、砂利の直径は10cm前後と推定されている(注:Sol.(ソル):リュウグウにおける1太陽日(約7.6時間)。リュウグウに着地した日をSol.1として、表面での経過日数を表す)。
現在ローバーは、「リュウグウ表面で朝を迎えて発電量が十分に増えると内部コンピューターを起動して「はやぶさ2」との通信を確立し、自律モードに移行して一度ホップして移動を行い、その後は夜まで移動せずに観測する」、というスケジュールで動作している。9月23日(Sol.7)に「Rover-1B」が1時間以上にわたって同じ場所に滞在して撮影した画像から、動画が作成・公開された。リュウグウの自転によって太陽が動く様子がとらえられている。
ただし、「Rover-1B」については9月24日(Sol.10)を最後に画像やテレメトリのデータが得られておらず、現在は低電力モードのまま動作している状況が続いているとみられている。データ転送が可能な高電力モードに切り替わらない原因は調査中だが、岩の影などに入って太陽電池に当たる日射量が少ない可能性もあるようだ。
9月27日の記者説明会で、「MINERVA-II1」の開発を担当した「はやぶさ2」プロジェクトの吉光徹雄さんは、「探査の経過日数を『Sol.』という言葉で表せるのは探査機が天体に降りて滞在している場合だけなので、今回私たちの探査機で『Sol.』という言葉が使えるようになったことは感極まる思いです」と語っている。
また、「MINERVA-II1」分離の際に「はやぶさ2」が高度64mから光学航法望遠カメラ(ONC-T)で撮影したリュウグウ表面の画像も公開された。これまでで最も解像度の高い表面の画像で、1ピクセルあたり約1cmのスケールで写っている。「はやぶさ2」の太陽電池パネルの幅が約6mなので、この画像に「はやぶさ2」の機体がちょうど収まるくらいの範囲が写っていることになる。
「はやぶさ2」ミッションでは、ドイツとフランスの宇宙機関が共同開発したもう一つの小型ローバー「MASCOT」の分離を10月3日に予定している。こちらの成功にも期待したい。
(文:中野太郎)
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