系外惑星の衛星らしい天体を初めて発見
【2018年10月10日 NASA】
地球から見て惑星が恒星の前を通過する際に星の明るさが暗くなる様子を観測すると、惑星の存在を推定することができる。この「トランジット」と呼ばれる現象の観測から、これまでに数多くの系外惑星が発見されている。また、原理的には、同じ手法によって惑星の周りを公転する「系外衛星」の存在も調べることが可能だ。
米・コロンビア大学のAlex TeacheyさんとDavid Kippingさんはこうした系外衛星を探す目的で、NASAの系外惑星探査衛星「ケプラー」が発見した系外惑星のうち、公転周期が30日以上の比較的大きな軌道を持つ惑星284個のデータを分析した。そして、はくちょう座の方向約8000光年の距離に位置する恒星「Kepler-1625」を巡る巨大ガス惑星「Kepler-1625 b」のデータから、この惑星に衛星とみられる天体が存在する可能性を見出した。
Teacheyさんたちは、さらにハッブル宇宙望遠鏡(HST)を使って、Kepler-1625の減光の様子を追加観測した。すると、惑星のトランジットの終了から約3.5時間後に、恒星の明るさがごくわずかに暗くなる様子が検出された。さらに、惑星のトランジットが始まると予測された1時間以上も前から恒星が暗くなり始めるという現象も見られた。これは、衛星の重力によって惑星の位置がずれたためと考えられる。ただし研究チームでは、未発見の別の惑星がずれを引き起こすした可能性もあるとしている。
「光度曲線に見られた2度目の減光と、タイミングのずれという2つの現象を、最もシンプルかつ最も自然に説明するのは、衛星の存在です。HSTが観測した光度曲線を見た瞬間、衝撃が走りました」(Kippingさん)。
研究チームによると、今回存在が示唆された衛星は、海王星に匹敵するほど大きいかもしれないということだ。また、惑星Kepler-1625 bの質量は木星の10倍ほどと見積もられており、衛星の質量はその1.5%ほどと推測されている。この惑星に対する衛星の質量比は、地球と月の比(月は地球の約1.2%)と近い値だ。衛星の主成分は岩石質ではなくガスとみられており、太陽系の惑星の衛星とは異なるプロセスで形成されたものと考えられる。
この天体が本当に衛星かどうかは、今後さらに詳しく観測して確認する必要がある。その観測や研究から、惑星系の進化に関する新たな知見がもたらされ、衛星の形成や組成に関する理解が進むことになるだろう。
〈参照〉
- NASA:Astronomers Find First Evidence of Possible Moon Outside Our Solar System
- Science Advances:Evidence for a large exomoon orbiting Kepler-1625b 論文
〈関連リンク〉
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