11光年彼方の恒星にスーパーアースの惑星系を発見
【2020年7月2日 ゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲン】
みなみのうお座の方向約11光年の距離に位置する赤色矮星「グリーゼ887(CD-36°15693、ラカイユ9352とも呼ばれる)」は、連星系を1つとして数えると太陽系に10番目に近い恒星である。質量も直径も太陽の半分ほどと小さく、近くにある割には暗いが、赤色矮星としては最も明るく見える星だ。
独・ゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲンのSandra Jeffersさんたちの研究チーム「RedDots」は、南米チリのヨーロッパ南天天文台ラ・シーヤ観測所に設置されている「HARPS」でグリーゼ887を観測した。そして、恒星のスペクトルの変化(ドップラー法)から、グリーゼ887を巡る2つの系外惑星を発見した。
どちらの惑星も質量は地球より大きいが、巨大氷惑星である天王星や海王星よりはかなり小さい「スーパーアース」に分類される系外惑星である。内側の「グリーゼ887 b」は約9.3日周期で中心星から約1000万kmのところを、外側の「グリーゼ887 c」は約21.8日周期で約1800万kmのところを、それぞれ公転している。これは水星(88日周期、約5800万km)よりもずっと中心星に近いが、グリーゼ887が赤色矮星でエネルギーが大きくないため、惑星の表面で水が液体として存在しうるハビタブルゾーンのあたりに位置する。外側のグリーゼ887 cの温度は約70℃と推定されている。
さらに今回の観測では2つのスーパーアース以外にも重要な発見があった。グリーゼ887には太陽と違って黒点がほとんどないということだ。もしグリーゼ887が活発であれば恒星風によって惑星の大気が一掃されてしまうだろうが、星の活動が穏やかとみられるということから、地球よりも多くの光を浴びているにもかかわらず、惑星は大気を維持しているかもしれない。その大気は地球よりも濃く、生命を宿している可能性もある。グリーゼ887の明るさはほぼ一定であることから、これらの惑星系の大気を検出することは比較的容易であり、ハッブル宇宙望遠鏡の後継機であるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の主要なターゲットとなる。
「これらの惑星は、太陽系外の生命探査を含む、より詳細な研究をするのに最適な可能性があります」(Jeffersさん)。
〈参照〉
- Georg-August-Universität Göttingen:Super-Earths discovered orbiting nearby red dwarf
- Science:A multiplanet system of super-Earths orbiting the brightest red dwarf star GJ 887 論文
〈関連リンク〉
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