まるで「ガスのないガス惑星」、巨大高密度系外惑星を発見
【2020年7月7日 ウォーリック大学】
英・ウォーリック大学のDavid Armstrongさんたちの研究チームは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)パラナル天文台に設置されている望遠鏡群「次世代トランジットサーベイ(NGTS:Next-Generation Transit Survey telescopes)」と、同じくESOのラ・シーヤ天文台3.6m望遠鏡に備え付けられた分光器「HARPS」で、ろ座の方向約730光年の距離に位置する恒星「TOI 849」の周りを回る系外惑星TOI 849 bを発見した。TOI 849 bの公転周期はわずか18時間で、太陽とよく似た恒星のすぐ近くを回っていて、表面温度は摂氏1500度ほどとみられている。
NGTSでは、主星の手前を通過することで主星の光がわずかに暗くなる様子を観測する「トランジット法」により、惑星の大きさを調べることができる。TOI 849 bの場合、サイズは海王星とほぼ同じであるとわかった。
一方HARPSのほうでは、主星が惑星の重力に振り回されることで生じるスペクトルのわずかな変動を検出する「ドップラー法」によって惑星の質量を計測できる。観測結果から、TOI 849 bの質量は海王星の約2.3倍と計算された。これはTOI 849 bの密度が、岩石惑星である地球とほぼ同じであることを意味している。地球と同じくらい高密度な系外惑星でこれだけ質量が大きなものが見つかるのも異例だが、そもそも海王星より一回り質量が大きくて木星よりはずっと小さな系外惑星自体が「海王星級惑星の砂漠地帯(Neptunian desert)」と呼ばれるほど珍しい存在だ。
「TOI 849 bは観測史上最大の質量を持つ地球型惑星(密度が地球並の惑星)です。これだけ質量が大きな惑星であれば、普通なら誕生したときに大量の水素とヘリウムを集めて木星のような天体に成長するはずです。そのガスが見当たらないということは、これが露出した惑星の核(コア)であることを意味します。巨大ガス惑星の核がそのまま露出した状態で恒星の周りを回っているのが見つかったのは初めてです」(Armstrongさん)。
なぜ普通の巨大ガス惑星ではなく、その核だけがむき出しで見えているのだろうか。研究チームは2つの可能性を挙げている。
1つ目は、かつては木星のような姿だったのに外層のガスをほとんど失ってしまったという説だ。その理由としては中心星に近づきすぎて引き裂かれたことや、他の惑星と衝突したことが考えられる。星の光によって大気が散逸した可能性もあるが、それだけではこれだけ多くのガスが失われたことは説明できない。
2つ目は、ガス惑星の成りそこないである可能性だ。つまり、核だけはできたのに何かがうまくいかず、大気が形成されなかったというシナリオである。生まれたての恒星を囲むガスと塵の円盤の中から惑星が形成される際、TOI 849 bが誕生した部分がたまたま空隙になっていたか、形成されるのが遅すぎて円盤に物質が残っていなかったのかもしれない。
「これは初めての事例であり、このような惑星が存在すること、発見され得ることを教えてくれました。太陽系では惑星の核を見るのは不可能ですが、この天体はそれができる機会を与えてくれているのです。たとえば、木星の核の性質については数々の大問題が未解決なまま残ってます。ですから、このような奇妙で特異な系外惑星は、惑星形成に関して知見を得るための唯一無二の手段となりうるのです」(Armstrongさん)。
〈参照〉
- University of Warwick:First exposed planetary core discovered allows glimpse inside other worlds
- Nature:A remnant planetary core in the hot-Neptune desert 論文
〈関連リンク〉
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