オシリス・レックス、小惑星ベンヌのサンプル収納完了
探査機「オシリス・レックス」は、10月20日(日本時間21日)にベンヌの表面へのタッチダウンに成功し、サンプルの採取を行った(参照:「オシリス・レックス、ベンヌへのタッチダウン成功」)。運用チームはその後2日間にわたり、サンプル採取装置「TAGSAM」(Touch-And-Go Sample Acquisition Mechanism) の採取ヘッドをカプセルに収納する準備を行い、10月24日から本格的な収納作業が始まった。
TAGSAMは探査機の底面に装備された長さ3.35mのロボットアームで、先端に直径約30cmの円盤型の試料採取ヘッドを備えている。採取ヘッドがベンヌの表面に接地すると、ヘッドの接地面に並ぶ穴から窒素ガスが噴き出す。これによって表面の物質が舞い上がり、ヘッドの内側にあるフラップ(開閉式の蓋)付きの採取室に導かれる。TAGSAMは最大3回のサンプル採取が可能で、十分にサンプルが採れたと判断されると、採取ヘッドは探査機の底面に装備されている回収カプセルに収納され、アームから切り離される。
タッチダウン後に撮影された採取ヘッドの画像から、今回のタッチダウンでは、目標としていた60gを大きく上回る量の物質が採取ヘッドに入ったとみられている。その一方で、採取したサンプルの粒子がヘッドからゆっくりと漏れ出して浮遊していることもわかった。本来閉じているはずの採取室のフラップにわずかなすき間ができているように見えることから、運用チームでは、フラップに大きな岩石がはさまって生じたすき間からサンプル粒子が漏れ出ていると推測している。
このため運用チームでは、これ以上物質が漏れ出さないように、10月24日に予定されていたサンプルの重量測定作業を見送り、23日に行われるはずだった、探査機を減速させるためのスラスター噴射も行わないことにした。採取ヘッドをカプセルに収納する作業は、当初の計画では11月初めに行われる予定だったが、すでに十分な量のサンプルを採取できたとみられることから、早々に収納を行うこととなった。
運用チームは10月24日からTAGSAMのアームを動かして採取ヘッドを収納する作業を始め、27日夜には回収カプセルの内部に採取ヘッドを固定させた。翌28日朝には、この状態でアームの「引き抜きチェック」を行い、ヘッドが確実にカプセル内に固定されていることが確認された。
28日午後には窒素ガスを採取ヘッドに送る配管を切断するコマンドが送信され、TAGSAMのアームからも採取ヘッドが切り離された。同夜に最終段階として回収カプセルが閉じられ、サンプルの収納が完了した。
「ヘッドをカプセル内の固定リングにはめ込む操作は複雑なので、正しい位置に置くまでに何度か繰り返すかもしれないと思っていましたが、幸いにも一度でうまく固定されました。おかげで収納作業を迅速に実行できました」(オシリス・レックス・プロジェクトマネージャー Rich Burnsさん)。
現在運用チームは、探査機の地球帰還に向けた準備に入っている。オシリス・レックスがベンヌを出発するのは最速で2021年3月になる。サンプルの入ったカプセルは、2023年9月24日に地球へ届けられる予定だ。「運用チームができるだけ早くサンプルを収納できるように頑張ってくれたことに非常に感謝しています。このサンプルが地球へ届き、カプセルを開ける日を楽しみに待っています」(オシリス・レックス主任研究員 Dante Laurettaさん)。
「私たちがベンヌで成し遂げたことはNASAにとってまさに初の快挙であり、この成果から今後数十年間にわたって恩恵がもたらされることでしょう」(NASA科学ミッション局副長官 Thomas Zurbuchenさん)。
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