中国の月探査機「嫦娥6号」、打ち上げ成功
【2024年5月7日 中国航天科技集団有限公司/中国国家航天局】
日本時間3日午後6時27分ごろ、中国の月探査機「嫦娥6号」が南シナ海北部・海南島の文昌宇宙発射センターから長征5号ロケットによって打ち上げられた。その後、嫦娥6号は月遷移軌道へ投入され、約53日間のミッションをスタートした。
中国国家航天局の月探査計画である「嫦娥計画」では、2007年に打ち上げられた「嫦娥1号」に続いて、2号から5号によって月周回軌道への投入と探査、月面軟着陸、月の裏側への軟着陸、月のサンプルリターンにそれぞれ成功している。今回打ち上げられた「嫦娥6号」は、それらに続く月探査機として、月の裏側の南極エイトケン盆地(SPA; South Pole-Aitken basin、直径約2000km)にあるアポロ・クレーター(直径約524km)の南部へ着陸し、サンプルを採取して地球へ持ち帰る計画だ。月の裏側に着陸するためには通信中継衛星が必須となるが、中国は今年3月に「鵲橋2号」を打ち上げており、直径4.2mの巨大なパラボラアンテナを備えた同衛星が月を周回しながら地球・月間の通信を中継する。
嫦娥6号は高さ約7.2m、重さ約8tで、周回機・着陸機・上昇機・帰還機で構成されている。月周回軌道に到着後、上昇機を搭載した着陸機が周回機から分離されて月面へ着陸し、ロボットアームやドリルを使って月の表面と約2mの深さから合計2㎏ほどのサンプルを採取する予定となっている。
サンプルを格納した上昇機は離陸して周回機とドッキングする。さらに上昇機からサンプルが帰還機へ移され、地球へ持ち帰られる計画だ。これまでに人類が取得した月のサンプルは全て月の表側からのものであり、嫦娥6号のミッションが成功すれば、史上初めて月の裏側のサンプルが地球へもたらされることになる。
月面に見られる衝突盆地の大部分は、41億年前から38億年前、太陽系の内側の惑星に微惑星が激しく衝突した「後期重爆撃期」に、大きな天体が月に衝突して形成されたものだ。月の表と裏では全体として裏の方が年代が古く、なかでも南極エイトケン盆地は、約42億6000万年前できた月面最大の盆地である。この巨大な盆地を形成した天体衝突で月内部のマントルの一部が表面へ露出している可能性があることから、南極エイトケン盆地は月内部の構造を知るうえで重要な地域とされている。この盆地から持ち帰られるサンプルを分析して構造や性質、組成などを明らかにすることは、なぜ後期重爆撃期に多くの天体衝突がほぼ同時に発生したのかという太陽系の歴史に関わる謎の解明や、巨大天体の衝突でできたとされる月そのものの生成要因、月の裏と表が大きく異なる理由など、月の起源と進化の理解につながると考えられている。
嫦娥6号には、月面と希薄な大気との相互作用を調べる観測機器2つとキューブサット1機も搭載されている。「DORN; Detection of Outgassing RadoN」はフランスから提供された観測機器で、レゴリスから継続的に発生している放射性ガスのラドンを測定する。スウェーデンとヨーロッパ宇宙機関から提供された観測機器「NILS; Negative Ions at the Lunar Surface」は、太陽風によって月表面から放出されるマイナスイオンを検出するものだ。また、パキスタンのキューブサット「ICUBE-Q」は月周回軌道で嫦娥6号から分離され、周回機や月や地球の撮影、月の磁場測定などを行う。
〈参照〉
- 中国国家航天局(CNSA):
- 中国航天科技集団有限公司:
- The Planetary Society
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