液体の水が見つかる可能性のある系外惑星、太陽系の近くに発見
【2021年12月10日 東京大学】
太陽以外の恒星を公転する系外惑星は、NASAの探査衛星「ケプラー」の活躍などによって5000個近く発見されている。その中には大きさと恒星からの距離が生命の存在に必要な条件を満たす「第二の地球」候補も多数含まれているが、多くは地球から遠くにあって詳しい観測が難しいため、惑星の質量や大気組成といった液体の水の有無に関わる情報を得るのは難しい。
恒星が十分に明るければ、わずかな光の変化を観測することによって惑星の詳しい情報が得られる。そこで、ケプラーの後継機に当たる探査衛星「TESS」は全天の明るい恒星を重点的に調べている。ただし、TESSの観測では基本的に「惑星が引き起こしている可能性のある信号」しか得られないため、惑星の存在を確認するには、その信号を発する天体を地上の望遠鏡で追観測して検証する必要がある。
東京大学の福井暁彦さんたちの研究チームは、国内外の大型望遠鏡に取り付けた装置で、惑星候補の検証観測を精力的に進めている。その観測により、地球から138光年という比較的近い距離にあるケフェウス座の恒星「TOI-2285」の周りに、系外惑星「TOI-2285 b」の存在が確認された。
TOI-2285 bの半径は地球の約1.7倍と、既知の系外惑星の中では比較的小さい。主星は太陽より小さく表面温度は摂氏3200度と低いが、惑星が恒星の近くにあるため、惑星表面に届く日射量は地球が太陽から受ける日射量の約1.5倍と見積もられている。この日射量は、これまでに見つかっている系外惑星の大半と比べれば穏やかだ。
日射量が穏やかでも、TOI-2285 bが地球のように比較的薄い大気しか持たない岩石惑星だった場合、表面の水はすぐに蒸発してしまう。一方、岩石質の中心核の周りにH2Oの層があり、それが水素を主体とする大気で覆われる構造だった場合、H2Oの層の一部が液体の水となって海を形成する可能性がある。その条件はTOI-2285 bの質量が地球の8倍以下であることだ。
福井さんたちの観測では、TOI-2285 bの質量が地球の19倍以下であることまではわかっている。実際にTOI-2285 bの表層に液体の水が存在するかどうかを調べるためには、惑星の質量を正確に測定し、既に判明している惑星の半径や日射量の情報と合わせて、惑星の内部組成を制約することが重要となる。次世代望遠鏡を含めた将来の観測により、水の存在を確認されると期待される。
〈参照〉
- 東京大学:太陽系の近くに低日射の小型系外惑星を発見
- PASJ:TOI-2285b: A 1.7 Earth-radius Planet Near the Habitable Zone around a Nearby M Dwarf 論文
〈関連リンク〉
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