系外惑星が地球のような月を持てる条件
【2022年3月29日 東京工業大学地球生命研究所】
月の半径は地球の4分の1以上もあり、これは太陽系の中で「惑星・衛星のサイズ比」としては異常なほどに大きい。月だけが、中心の惑星である地球に対して目立った影響を与えるほどのサイズなのだ。このことは、地球の生命にとって有利に働いている。たとえば、地球の自転軸が安定しているのは月によるところが大きい。そのおかげで気候も安定し、生命の誕生と進化に理想的な環境を提供している。また、月による潮汐力は地球の1日の長さと海の潮の満ち引きにも関わり、生物の活動に大きな影響を与えてきた。
地球にとっての月がそうであるように、系外惑星に大きな衛星が存在すれば、生命も存在する確率が高まると考えられている。地球に似た岩石惑星や、海王星のような氷惑星はいくつも見つかっているが、それらが月のような大型衛星を持つ見込みはどれだけあるだろうか。
月は約45億年前、原始地球に火星サイズの大きな天体が衝突して形成されたと考えられている。そこで、米・ロチェスター大学の中島美紀さんたちの研究チームは様々な質量の惑星で衝突シミュレーションを行い、地球にとっての月のように大きな衛星が形成される可能性や条件を検証した。
原始地球への衝突では、衝撃により一部の岩石が融解、一部が蒸発して地球の周りに円盤を形成し、その円盤から月が形成されたというメカニズムが提唱されている。一方、中島さんたちのシミュレーションからは、質量が地球の6倍以上の岩石惑星と1倍以上の氷惑星では、衝突時のエネルギーが高いため円盤を形成する物質は全て蒸発してしまうことがわかった。このような状態では、時間とともに円盤が冷えて液体の小衛星が出現しても、周りの蒸発している気体による抵抗を受けてすぐに惑星に落下してしまう。したがって、そこから月のように大きな衛星は形成できないと研究チームは結論づけた。
現在のところはっきりと「太陽系外衛星」が見つかった例はないが、捜索の試みは始まっている。今回の結果からは、小さい惑星に注目するほうが、大きい衛星を持つ(見つけやすい)可能性が高いと言えそうだ。
〈参照〉
- 東京工業大学地球生命研究所:太陽系外惑星の生命の存在を探る鍵となる、月の形成条件を解明
- Nature Communications:Large planets may not form fractionally large moons 論文
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