宵の空で増光中、明るくなっていくしし座Rを見よう

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ミラ型変光星のしし座Rが日ごとに明るくなり観測好期を迎えている。ミラ型変光星の中で初心者に最もお勧めの星とも言われるしし座Rを、宵空で追いかけよう。

【2022年5月19日 高橋進さん】

春を代表する星座の一つであるしし座は、今の時季、宵のころに南西~西の空に見えています。そのしし座の1等星レグルスの近くに輝く、しし座R(R Leo)は、5等級から11等級の間を約312日の周期で変光するミラ型変光星です。ししの前足にあたるο(オミクロン)星を探して、そこから北東にたどると見つかります。5.7等と6.4等の星が目印となって見つけやすく、しし座R自体がわりと明るいこともあって、ミラ型変光星の中でも初心者向けのお勧めの星です。

しし座R周辺の星図
しし座R周辺の星図。数字は恒星の等級(64=6.4等)を表す。画像クリックで表示拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)

今年のしし座Rの極大は7月中旬と予報されていますが、このころは太陽が近いため、実際に観測可能なのは6月中旬くらいまでと思われます。しかし、この5月中旬でしし座Rは7.7等まで明るくなっており、この後もしばらくは3日に0.1等くらいのスピードで明るくなっていくと思われます。2~3日に一度くらい観測すると明るさをどんどん増していく様子がよくわかりますので、ぜひ多くの皆さんに見ていただきたい変光星です。

しし座Rの光度
しし座Rの光度(VSOLJメーリングリストのデータから高橋さん作成)

初めて変光星を観測する人は「0.1等の精度で観測するのは難しいだろう」と思われるかもしれませんが、少し慣れてくればそれほど難しくはありません。たとえば、夏の大三角のベガとアルタイルを見比べてみると明るさがずいぶん違うのはよくわかりますが、ベガは0.0等、アルタイルは0.7等で、その差は0.7等です。ベガとアルタイルの明るさの違いを見ると、0.1等というのは意外とわかるのでは、と感じられるのではないでしょうか。

しし座Rの明るさを見積もるには、周囲にある7.6等、6.9等、6.4等の星と見比べてみましょう。もし7.6等と6.9等の間くらいの明るさで、4:6で7.6等に近い明るさだとすれば、((7.6-6.9)÷10)×6+6.9≒7.3等級、と見積もることができます。また、他の人の観測値と大きく違っていたらどうしようと心配されるかもしれませんが、上の光度曲線を見ていただくとわかるように、多くの観測者のデータを集めた光度曲線にはかなり等級幅があります。星を取り違えたり等級の計算を間違えたりしない限り、光度曲線から外れたとんでもない値になることはまずありません。あまり難しく考えず、気軽に変光星観測にチャレンジしてみてください。

一方で、このようにミラ型変光星の観測は初心者でもできるため、逆に天文学的な価値が低いように思われることもあります。しかし、ミラ型変光星の観測は恒星の進化を調べるのにとても大切なものです。長年のミラ型変光星の観測からは変光周期の変化なども明らかになることがよくあります。この周期変化は、恒星内部の変化や恒星の大きさの変化と関連すると思われています。

数十億年にも及ぶ恒星の一生の中で、ミラ型の変光を見せる期間はせいぜい100万年程度の期間と考えられています。恒星の寿命の中ではあっという間の期間にしかすぎませんが、この期間に激しく質量を放出したり恒星内部のヘリウムに火がついたりといった、様々な現象を起こしながら進化が進んでいくのです。こうした恒星進化の研究に欠かせないのが、ミラ型変光星をはじめとした脈動変光星の観測です。この機会にぜひ、変光星観測の世界をお楽しみください。

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