2023年の主要なミラ型変光星の光度変化予測

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数か月以上の長い周期で明るさが大きく変わるミラ型変光星のうち主なものについて、2023年の光度変化の予測グラフを紹介しよう。しし座R、はくちょう座χなどが見やすそうだ。

【2023年1月13日 高橋進さん】

「ミラ型変光星」は100日以上の周期で2.5等級以上の明るさ変動があり(日数、等級ともに参考値)、比較的規則的な変光を見せる脈動変光星です。光度変化が大きいことから変光の様子がわかりやすく、初心者の方でも観測が容易です。一方でミラ型変光星の観測は恒星の進化の研究に不可欠なものであり、また周期光度関係から距離測定などにも使われる天体です。

2021~2022年のミラの光度曲線
2021~2022年のミラの光度曲線(VSOLJメーリングリストのデータから高橋さん作成)

こうしたミラ型変光星の中でも明るく観測しやすい9星について、いつどれくらいの明るさかの予想グラフを作成しました。ぜひ参考にして観測にお役立てください。今年は春から初夏にかけての時期に、明るく人気のミラ型変光星の多くが極大を迎えます。

※ミラ型変光星の極大予報は様々な天文誌や観測団体で公表されています。データの選択や計算手法により日付や等級に関して多少のずれはありますが、自分の気に入った予報をお使いください。筆者は基本的に日本変光星観測者連盟のデータを使い、データが少ない場合などはアメリカ変光星協会のデータも参考にして、過去10年間ほどの周期をもとにして計算しています。

ミラ型変光星の2023年の変光予想
ミラ型変光星の2023年の変光予想。画像クリックで表示拡大(提供:高橋さん)

まず、春を代表するミラ型変光星のしし座R(R Leo)が5月17日ごろに極大を迎えます。3月ごろから急速に明るくなり、極大等級は5等くらいと思われます。ししの前足からたどると見つけやすいでしょう。6月の終わりごろになると西に低くなりますが、それまでは楽しめます。

しし座R周辺の星図
しし座R周辺の星図(「ステラナビゲータ」で星図作成、以下同)

「クリムゾンスター」の愛称がある、赤い色で人気のうさぎ座R(R Lep)は4月26日ごろ極大と予想されます。特徴的な色を頼りに双眼鏡や望遠鏡を向ければ、わりとすぐに見つかります。赤い星はじっと見続けていると明るく見えてくるので、明るさを目測する際には素早く見るのがおすすめです。うさぎ座はオリオン座の下に位置し、4月になると夕方でも低くなってしまいます。そのため、うさぎ座Rは極大までは追いかけられないかもしれません。また、オリオン座U(U Ori)の極大は5月30日ごろですが、観測できるのは5月中旬くらいまでなので、今年は極大の観測は難しいかもしれません。

うさぎ座R周辺の星図
うさぎ座R周辺の星図

はくちょう座χ(χ Cyg)は4~13等までダイナミックな変光を見せる星です。今年の極大は6月4日ごろで、深夜に高く上るという絶好のタイミングで観測できます。4等まで明るくなれば「白鳥の首がねじれる」などと表現される見え方になりますが、極大でも7等程度にしかならない時もあります。ぜひ明るい極大になることに期待しましょう。

はくちょう座χ周辺の星図
はくちょう座χ周辺の星図

ミラ型変光星の代表星のくじら座のミラ(くじら座ο、ο Cet)の極大は6月6日ごろとみられます。このころはミラ(くじら座)が太陽と同じ方向にあり、また夏至が近く観測可能な時間が短いことから、極大期のミラを見るのは難しそうです。今年は夏以降に、極大を過ぎてゆっくりと減光していくミラを楽しむことになるでしょう。ちなみに同時期の南半球は夜が長いので、5月から6月にかけても明け方前の東天で観測可能です。お出かけされる方はチャレンジしてみてください。

おとめ座R(R Vir)の変光間隔は146日でミラ型変光星の中でも短周期の星です。2023年は2月15日、7月11日、12月3日ごろに極大が予想されていますので、メリハリの効いた変光を楽しんでみてください。

おとめ座R周辺の星図
おとめ座R周辺の星図

わし座R(R Aql)の極大予想は10月2日ごろです。小望遠鏡で楽しめる二重星のへび座θの近くにあり、極大光度6等と見つけやすい星です。夏にどんどん明るくなっていく様子を観察してみましょう。

わし座R周辺の星図
わし座R周辺の星図

最後に、極大期の観測は難しそうですが注目のミラ型変光星として、うみへび座R(R Hya)を挙げます。9月17日ごろに極大とみられますが、太陽が近いことや南に低いことなどが理由で、日本では7月下旬から11月下旬まではほぼ観測できません。

この星は発見された1700年ごろは変光周期が495日とされていましたが、その後どんどん周期が短くなり、最近の観測では約360日になっています。周期が短くなっているのは恒星の直径が小さくなっているためと思われ、恒星の内部構造の研究でも大いに注目されているのですが、変光周期がほぼ1年のため近年はずっと極大期の観測ができず、データを得にくい状態が続いています。極大期の観測が難しいだけに、それ以外の時期の観測が重要といえるでしょう。

春から初夏にミラ型変光星の極大が集中していますが、他にも多くの星の変光が楽しめます。変光星を観測して楽しい一年をお過ごしください。


星ナビ2023年1月号ではこのほか、かんむり座Tやかんむり座R、ペルセウス座βアルゴルなどミラ型変光星以外も解説いただいています。

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