増光中の真っ赤な変光星うさぎ座Rを見よう
【2023年3月6日 高橋進さん】
うさぎ座Rは1845年にイギリスのジョン・ハインドによって真っ赤な星として発見され、1855年にドイツのユリウス・シュミットによって変光星であることが明らかにされたミラ型変光星です。天体望遠鏡で見ると本当に真っ赤な星で、ハインドはその色を「黒い視野に落とされた一滴の血のよう(like a drop of blood on a black field)」と表現しています。そうしたことから、うさぎ座Rは別名「ハインドのクリムゾンスター」とも呼ばれています。
うさぎ座Rの変光範囲は変光星総合カタログでは5.5~11.7等とされ、変光周期は427日とされています。ただ実際の変光幅は4等級くらいで、明るい時期の変光範囲は5~9等、暗い時期は9~12等くらいになります。この明るい時期と暗い時期はおよそ40年の周期で変化していることが知られています。また、変光周期にも変化が見られ、最近の周期はおよそ440日と見積もられています。
うさぎ座Rの最近の光度変化は、昨年の8月ごろ約10.5等の極小になったとみられています。その後ゆっくりと明るさを増していますが、10.5等という極小光度は40年の周期の中でもかなり暗いもので、これに続く今回の極大も暗めになると思われます。前回の極大が2022年2月12日であったことから、今回の極大は4月26日ごろと予想されます。2月末の等級はおよそ8.5等ですが、この後どの程度明るくなるかたいへん興味深いところです。
実は、うさぎ座Rは変光星の中でも目測の難しい星と言われます。というのも、普通のミラ型変光星などと比べると極端に色が赤く、そのため等級の見積もりのばらつきが大きいとされるからです。赤い星はずっと見ているとだんだんと明るく感じられてくるため、赤い星はできるだけ早く目測するようにとよく言われます。また、人によって色の感じ方が異なることによるばらつきもあります。観測者ごとに色分けした光度曲線を見ると、明るめに見積もる方と暗めに見積もる方がいらっしゃるのがよくわかります。
この図を見ると、2021年11月に少し暗くなってから2022年2月の極大に向かって明るくなっている様子がわかり、今回も2023年1月に少し暗くなった後に光度を上げようとしていることもわかります。さらに、すべての観測者のデータをそのまま集めると幅の広い光度曲線ですが、個々の観測者の皆さんはそれぞれに変光の様子をきちんととらえられていることも見てとれます。
今回の極大はうさぎ座Rとしては暗めの極大になるかと思われますが、この後どのような光度変化が見られるかたいへん興味深いところです。オリオン座の足元に位置するうさぎ座は、これからの季節は深夜には沈んでしまうためやや見づらいのですが、魅惑的なうさぎ座Rの色と変光の様子を、ぜひお楽しみください。
〈関連リンク〉
- 日本変光星研究会
- VSOLJ Variable Star Bulletin
- アメリカ変光星観測者協会
- アストロアーツ:
- 「星ナビ」2023年4月号 Observer's NAVI「増光中のうさぎ座R星を見よう」
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