太陽で起こるガス加速とそっくり、活動銀河核の超高速ガス噴出
【2026年1月8日 JAXA宇宙科学研究所】
銀河中心に存在する超大質量ブラックホールに周囲から物質が落ち込むと、重力エネルギーが解放されることによって銀河中心が明るく輝く。こうした「活動銀河核」は物質を降着すると同時に周囲にエネルギーや運動量を渡し、このフィードバックによって周囲の環境、ひいては銀河の進化にも影響を与えると考えられている。
オランダ宇宙研究機関のLiyi Guさんたちの国際研究チームはX線分光撮像衛星「XRISM」を用いて、ケンタウルス座の方向約1.3億光年彼方にある渦巻銀河NGC 3783を観測した。この銀河は太陽質量の3000万倍の超大質量ブラックホールを中心に持ち、活動銀河核として知られる。

(背景)ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したNGC 3783、(手前)XRISMの軟X線分光装置「Resolve」によるX線スペクトル(提供:(NGC 3783)NASA/ESA、(スペクトル)JAXA/ESA/NASA)
観測の結果、爆発現象や明るさの変化のほか、ブラックホールの周りに広がる降着円盤からガスが噴出する瞬間がとらえられた。ガスの速度は秒速6万kmにも達し、これは高速の20%という猛烈なスピードだ。「ブラックホールで発生したX線バーストが引き金となって、わずか1日で超高速の風が引き起こされる瞬間を初めてとらえました。ブラックホールでこれほどの高速風が生み出される様子が観測されたことは、これまでに例がありません」(Guさん)。

超大質量ブラックホールから噴出する高速ガスの想像図。降着円盤の超高温領域からループ状にX線フレアが発生し、強烈なガスが放出される(提供:ESA)
さらに分析の結果、ガスが一気に加速した様子は、太陽磁場のエネルギーが解放されて大量のプラズマ塊が放出される爆発的な現象「コロナ質量放出」におけるガスの加速パターンとそっくりであることがわかった。
コロナ質量放出では磁場の形が急激に変わり、磁力線のつなぎかえ現象「磁気リコネクション」が起こって莫大な磁気エネルギーが解放される。今回NGC 3783で観測されたガス噴出も、降着円盤で磁気リコネクションが起こったことによってガスが一気に吹き飛ばされたと考えられるという。ガス噴出が発生した領域が、高温で重力と磁力が激しくせめぎ合う極限環境にあることや、磁気リコネクションのエネルギーによって観測されたガスの急加速が説明可能となるからだ。
今回の成果は、磁気エネルギーの急激な解放という、太陽で起こる高エネルギー物理とよく似た仕組みが、活動銀河核でも機能している可能性を示唆している。とはいえ、観測されたガス噴出の規模は太陽で起こるものの100億倍にも及ぶ。
「このような風を伴う活動銀河核は、銀河の進化や星形成プロセスに重要な役割を果たしています。活動銀河核の磁気特性や、こうした風がどのように引き起こされるのかを解明することは、宇宙全体の銀河の歴史を理解する上で鍵となります」(ヨーロッパ宇宙機関 Camille Diezさん)。
〈参照〉
- JAXA宇宙科学研究所:太陽の爆発にそっくり? 超巨大ブラックホールからのガス噴出をXRISMが観測
- SRON:Black hole outburst observed similar to outbursts on the Sun
- ESA:Flaring black hole whips up ultra-fast winds
- Astronomy & Astrophysics:Delving into the depths of NGC 3783 with XRISM III. Birth of an ultrafast outflow during a soft flare 論文
〈関連リンク〉
- XRISM:
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