褐色矮星と思われてきた天体、実は若い惑星状天体だった
【2017年5月10日 Carnegie Science】
うお座の方向約20光年の距離に位置する天体「SIMP J013656.5+093347(SIMP0136)」はこれまで、褐色矮星という種類の天体と考えられてきた。褐色矮星は巨大惑星よりは大きいが、恒星としては小さすぎる(軽すぎる)ため、天体中心部での核融合反応を持続して行うことができず、長い間高温で明るく光ることはできない。
米・カーネギー科学研究所のJonathan Gagnéさんたちの研究チームは、SIMP0136が年齢2億歳程度の天体の集団「Carina-Near」の一員であることを突き止めた。
Carina-Nearのように宇宙空間を一緒に移動している年齢の似通った星の集まりは、その集団内にあって主星を持たない惑星状自由浮遊天体(自由浮遊惑星)を研究するうえで重要な対象である。冷たく孤立した自由浮遊惑星の年齢を決定する唯一の方法を提供してくれるからだ。年齢と温度がわかれば、天体の質量を知ることができる。
こうした結果から、SIMP0136の質量は木星の13倍程度であることがわかった。この数値は褐色矮星の特性と惑星状天体とのちょうど境界あたりだが、SIMP0136は褐色矮星というよりはむしろ自由浮遊惑星と呼ぶべき天体といえる。
この程度の質量を持つ天体は、近年多数発見されている巨大な系外ガス惑星ととてもよく似ている。こうした系外惑星は中心星が明るすぎるため大気の観測を行うことが非常に難しいが、自由浮遊惑星であればそうした問題がない。したがってSIMP0136のような天体は、系外惑星の大気の研究という点で貴重な存在となる。
「SIMP0136が褐色矮星だと考えられていた時点ですでに、非常に速く変化する表面の気象パターンを検出していました。これまでにわずかな発見例しかない自由浮遊惑星に新メンバーとしてSIMP0136が仲間入りしたことは、非常に注目すべきことです」(研究チームのÉtienne Artigauさん)。
〈参照〉
- Carnegie Science: Surprise! When a brown dwarf is actually a planetary mass object
- The Astrophysical Journal Letters: SIMP J013656.5+093347 is Likely a Planetary-Mass Object in the Carina-Near Moving Group 論文
〈関連リンク〉
関連記事
- 2024/11/18 超高密度スーパーアースとその形成過程の手がかりとなり得る外側の惑星を発見
- 2024/09/11 ホットジュピターの内側で、公転が大きく変動するミニ海王星
- 2024/07/29 「灼熱の土星」型の系外惑星で大気から水蒸気の証拠を検出
- 2024/06/18 想定外の軌道を持つ「ミニ海王星」を発見
- 2024/05/30 ローマン宇宙望遠鏡の系外惑星観測用コロナグラフが準備完了
- 2024/05/27 宇宙生命探査の鍵となる「太陽系外の金星」を発見
- 2024/05/21 超低温の赤色矮星で2例目、地球サイズの系外惑星を発見
- 2024/04/18 植物の排熱が地球や系外惑星に及ぼす影響
- 2023/12/05 共鳴し合う6つ子の系外惑星
- 2023/08/02 蒸発する惑星が引き起こす「しゃっくり」
- 2023/07/28 巨大惑星に収縮する前の塊、若い星の周囲で発見
- 2023/07/27 次々見つかる浮遊惑星、天の川銀河に1兆個以上存在か
- 2023/07/14 公式ブログ:ペガスス座51番星系で新星座を考える
- 2023/05/25 火山活動の可能性がある地球サイズの系外惑星
- 2023/04/21 アストロメトリと直接撮像の合わせ技で系外惑星を発見
- 2023/04/04 「ケプラー」発見の天体で最も近い地球型惑星
- 2023/01/17 光合成の蛍光から系外惑星の生命を探す
- 2022/12/28 ヒヤデス星団で褐色矮星の姿がとらえられた
- 2022/12/22 低密度の系外惑星、「煮えたぎる海洋惑星」か
- 2022/12/20 地球型惑星の大気は強い紫外線に負けない