無数の銀河の深宇宙画像に小惑星の「フォトボム」
【2017年11月10日 NASA/HubbleSite】
スナップ写真や記念写真に偶然、あるいはわざと無関係な人が写り込む現象や行為のことを「フォトボム(photobomb)」という。天体写真であれば鳥や飛行機、人工衛星などの写り込みがフォトボムと言えるだろう。
その究極版とも呼べるような画像が、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)によってとらえられた。メインの観測ターゲットは数十億光年も彼方にある銀河、そこに写り込んでフォトボムを起こしたのは小惑星だ。
HSTは「フロンティア・フィールド」と呼ばれるサーベイ観測の一環として、他の天文衛星や望遠鏡と共に6つの銀河団の観測研究を行っている。以下の画像はそのうちの1つ、くじら座の方向約40億光年彼方に位置する数百個の銀河の集まり、銀河団Abell 370である。
数えきれないほど多くの銀河と共に、複数の白い曲線が見られるが、これらが「写り込んでしまった」小惑星たちの軌跡だ。軌跡が曲がっているのは、HSTが地球を周回しながら観測を行っていることや地球が太陽の周りを回っていること、小惑星が公転することにより、地球から平均して「ほんの」2億6000万kmしか離れていない小惑星が背景の銀河に対して複雑に動いて見えるためである。
画像中には22本の曲線が見られるが、複数のフィルターで撮影した画像を合成したために1つの小惑星が複数の線としてとらえられており、実際に写っている小惑星は5つである。また、画像中には、銀河団の重力による重力レンズ効果を受けて像が曲げられた、さらに遠方の銀河も青い弧状の線として写っている。
この「フロンティア・フィールド」観測では、天球上で各銀河団のすぐそばに位置する「パラレル・フィールド」の観測も同時に行っている。銀河団Abell 370から約0.1度(月の見かけの約4分の1)離れたパラレル・フィールドを撮影したのが、次の画像だ。
銀河団のように目立った天体はないものの、有名な「ハッブル・ディープ・フィールド」と同様、パラレル・フィールドにも渦巻銀河や楕円銀河などが無数に写っている。赤っぽく見える天体は、宇宙膨張によって天体からの光が大きく赤方偏移しているものと考えられ、最遠方の銀河である可能性が高い。
そしてこの領域の画像でも、やはり7つの小惑星が20本の曲線として写り込んでいる。Abell 370やそのパラレル・フィールドは見かけ上、太陽系の惑星や多くの小惑星が存在する黄道面に近いところにあるため、フォトボムされやすいのも仕方のないことなのだ。
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