「はやぶさ」、地球帰還まであと2日

【2010年6月11日 NASA

小惑星探査機「はやぶさ」は、小惑星に着地し、表面の物質を採取することを試みた世界初の探査機である。その「はやぶさ」が7年という長い旅から間もなく帰ってくる。帰還当日は、リエントリカプセルの大気圏再突入のようすが、地上と上空から慎重にモニターされる。


(大気圏に再突入する「はやぶさ」と分離されたリエントリカプセルの想像図)

大気圏に再突入する「はやぶさ」と分離されたリエントリカプセルの想像図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL)

2003年に打ち上げられた「はやぶさ」は、2005年に小惑星「イトカワ」に到着、2006年にはその表面への着地を果たした。その後「はやぶさ」との通信が途絶えたり、姿勢制御装置やエンジンの異常などにより帰還が危ぶまれたが、苦難の長旅をあと2日で終えて、故郷の惑星地球へ戻ってくる。帰還に向けた軌道誘導などには、NASAの研究者や技術者も協力している。

NASAの「はやぶさ」プロジェクトのマネージャーを務める、 NASAジェット推進研究所の Tommy Thompson氏は「『はやぶさ』は、物理的に小惑星との接触を果たし、さらに地球への帰還を果たす世界初の探査機となります。『はやぶさ』を運用するチームは、この7年間にさまざまな困難を乗り越えてきました。この旅は、宇宙開発における大きな功績であり、NASAがその一部を担ったことを誇りを感じています」と話している。

「はやぶさ」は、小惑星のサンプルを採取して地球に持ち帰るための技術実験探査機として設計され、2003年5月に打ち上げられた。イオンエンジンによる推進や自立航法、サンプル採取や大気圏に再突入するリエントリカプセルなど新たな試みも多く、そこから得られた経験や情報を今後の宇宙開発に生かすことも目的の一つであった。

「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」に到着したのは2005年9月。その後2か月半以上にわたって小惑星に接近したまま、地形や表面の起伏、鉱物の組成、重力や太陽光の反射などを調べ、同年11月25日には、イトカワの表面へのタッチダウンを果たした。

その瞬間に「はやぶさ」は、小惑星の表面に降下した史上2番目の探査機となった。最初にその偉業を果たしたのは、NASAの小惑星探査機「NEAR-シューメーカー」だ。同探査機は、2001年2月12日に小惑星エロスに着陸した。

一方「はやぶさ」は、小惑星に着地、さらに表面の物質を採取することを試みた世界初の探査機であり、今その帰還に世界が注目している。

NASAでは、日本国内にある地上追跡局 と連絡を密にとりながら、 NASA ジェット推進研究所の深宇宙ネットワーク(DSN)の3か所のアンテナ(アメリカ合衆国のカリフォルニア州、スペインのマドリッド、オーストラリアのキャンベラ)を利用するなどして、地球帰還に向けた「はやぶさ」の軌道修正に必要なデータを収集、また探査機の状態に関する情報も提供し続けてきた。

日米共同チームは、カプセルを回収するために、大気圏突入というもっとも重要な段階を地上と上空の両方からモニターする。また、SETIの科学者で、NASAのエイムズ研究センターのPeter Jenniskens氏が率いる国際的なチームは、大型ジェット旅客機のダグラス DC-8を使って雲の上から、「はやぶさ」をモニターする。

Jenniskens氏は「『はやぶさ』のカプセルは、(2006年1月に地球へ帰還した彗星探査機『スターダスト』のカプセルに続いて)史上2番目の速度で大気圏に再突入します。この時の大気との摩擦で生じる加熱は、カプセルに使用されている耐熱材に負荷をかけます。人工の物体がそのような速度で大気圏に突入することを観測するチャンスはめったに訪れません。わたしたちは、より近くでこの現象を観測したいと思います」と話している。

Jenniskens氏らのチームでは、大気圏再突入時の耐熱材のようすを観測して、将来予定されている火星のサンプル採取用のリエントリカプセルの開発に活用する予定だ。

なお、着地したカプセルは、地上で待つ「はやぶさ」チームによって回収されたあと、神奈川県相模原市にある宇宙航空研究開発機構(JAXA)の施設へ移送され、JAXANASAの科学者によって分析が行われる。


※アストロアーツ注:「はやぶさ」の帰還当日は、インターネット中継やパブリックビューイングなどのイベントが予定されている。イベントの開催地や中継の配信元などは、以下の関連リンクにある「『はやぶさ』帰還当日のイベント情報」を参照のこと。

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