ショートガンマ線バーストにおけるX線超過成分の時間変動を解明
【2019年11月5日 金沢大学】
はるか遠くにある天体の存在を確認することは、宇宙の成り立ちを解明する上で非常に重要だ。これまでは天体から届くX線やガンマ線といった電磁波の観測がその唯一の方法だったが、近年次々に検出されるようになってきた重力波から得られる情報を活用することで、さらに確度の高い観測が可能になると考えられている。とくにブラックホールや中性子星など高密度天体同士の連星合体は、非常に強い重力波が放射されると同時にショート(短時間)ガンマ線バーストも発生すると考えられていることから、重力波と電磁波の両方で観測する絶好のターゲットとなる。
ガンマ線バーストが発生すると、数秒から数十秒にわたってガンマ線で明るく輝く様子が観測される。その正体は宇宙最大の爆発現象であり、大質量星の崩壊を起源として超新星爆発を伴うロング(長時間)ガンマ線バーストと、中性子星を含むブラックホールなどの高密度星の連星が合体するときに生じるショートガンマ線バーストの2種類に分けられる。
このうちショートガンマ線バーストでは、バースト後に100秒ほど継続する、緩やかな時間変動を伴う比較的低エネルギーのX線超過が見られる。ショートガンマ線バーストに匹敵する総エネルギー量を持つX線超過が観測される例もあることから、重力波との同期観測の有力な候補の一つと考えられている。しかし、その放射メカニズムや発生機構などは未解明だ。
金沢大学の加川保昭さんと米德大輔さんたちの研究チームは、複数のX線超過成分の系統的なデータ解析から、X線超過の時間変動が指数関数的な減光で統一的に記述し得るという統一的な減光モデルを発見した。また、X線の減光率と光度との間に強い負の相関関係が示され、X線超過が暗いほどエネルギーの放射効率が悪いという特徴を持つことも確認した。
さらに、X線の指数関数的な減光から、連星合体後に形成される中心天体や合体の衝撃で周辺にまき散らされる物質の運動に対しての示唆も得られており、こうした成果がガンマ線バーストのエネルギー源などの解明や、ブラックホールが形成される際の強重力環境の理解につながることが期待される。
〈参照〉
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