「あかつき」、代替エンジンで金星を目指しつづける
【2011年10月3日 JAXA】
金星探査機「あかつき」運用チームは、9月に行われた軌道制御エンジンのテスト噴射で推力不足を確認し、今後は代替として姿勢制御エンジンによる軌道制御を行っていく方針を明らかにした。当初の予定とは異なる金星周回軌道への投入に向け、観測成果を最大限にするための模索が続けられる。
探査機「あかつき」の軌道制御エンジン(OME)の状態を把握するため9月7日と14日に行われたテスト噴射では、地上試験に基づいて衝撃を緩和する方法が採られ、推進剤の供給も十分であったにも関わらず、推力が想定の9分の1しかなかった。燃焼器の破損が進行していると考えられ、今後このOMEの使用は断念することとなった。
OMEでは酸化剤と燃焼剤を混合燃焼させて推力を得るが、代わりに使われる姿勢制御用エンジン(RCS)は燃焼剤しか使わないため、今年10月中旬までに酸化剤を投棄して機体の軽量化を図る。その後、11月上旬にRCSによる軌道制御を実施して2015年の金星再会合・周回軌道投入を目指す。OMEのテストの際にRCSの噴射も行われたが、こちらは問題ないことが確認されている。
推力が少ないRCSでは、当初予定していた30時間周期の金星周回軌道に入れることはできない。数日〜1週間オーダーの周期となる見込みだが、RCSの性能や探査機の状態を見ながら、最大の観測成果を得られるような軌道を模索していくという。
昨年12月7日にOMEによる金星周回軌道入りに失敗した後、探査機そのものが数千万km以上彼方にある状態での原因の絞り込み、地上試験、テスト噴射を経て、今回の方針決定でようやく「旅の仕切り直し」となった。予定より太陽に近づく軌道となったことで、熱や太陽風からの機体・観測機器の保護など目を離せない運用が続くが、プロジェクトマネージャーの中村正人教授は「(金星の気象の解明は)やらなければならない観測」と衰えない気概を見せる。
10月3日、「あかつき」は打ち上げから500日目を迎えた。