探査機ケプラー、珍しい超新星爆発の初期段階を観測

このエントリーをはてなブックマークに追加
NASAの系外惑星探査衛星「ケプラー」が惑星ではなく、遠くの銀河で発生した超新星爆発を観測した。他の同タイプの超新星と異なり、爆発直後から急増光するという変わった性質がとらえられている。

【2018年12月7日 NASAカーネギー研究所

今年2月、NASAの系外惑星探査衛星「ケプラー」が、かに座の方向約1億7000万光年彼方の渦巻銀河「UGC 4780」に出現した超新星SN 2018ohの光を検出した。約半年間にわたり地上の望遠鏡と連携して行われた、天球上の同じ方向を同時観測している際にとらえられたものだ。

SN 2018oh
超新星SN 2018oh。上段は出現前、下段が出現後。右端の2つがケプラーによる観測画像(提供:カーネギー研究所プレスリリースより)

分光観測の結果、この天体はIa型超新星として分類された。典型的なIa型超新星は、3週間ほどかけて明るくなり、その後徐々に暗くなっていく。しかしSN 2018ohの場合は違った。爆発後急速に明るさを増し、数日後には明るさのピークに達したのだ。地上観測によるデータから、SN 2018ohの明るさが極大だったころの光が明るく青かったことがわかり、この天体が高温であることが示された。

Ia型超新星発生のシナリオは、長年の議論の的となっている。これまで観測から得られた証拠のほとんどは、2つの白色矮星同士の合体によって発生することを示している(Double Degenerate:DD説)。一方、理論モデルからは、単独の白色矮星が伴星から多くの物質を引き込んで自身の重さを維持できなくなり爆発を起こして衝撃波が発生する、という別のシナリオの可能性が示されている(Single Degenerate:SD説)。

一部の研究者は、SN 2018ohがSD説通りの現象の一例だと考えている。SN 2018ohで観測された明るさと熱は、白色矮星の爆発の衝撃波が伴星に衝突することで作り出された、非常に高温で明るいガス状の物質によるものだという。

他の研究者らは、その類まれな明るさと温度は別のメカニズムによるものではないかと考えている。Ia型超新星は爆発の間に放射性ニッケルを生成し、超新星爆発で生じる光の大部分はこの種の物質が放射性崩壊を起こす際に放射される。もし大量のニッケルが爆発する物質の外層部に存在していれば、今回観測されたような急増光が生じると考えられる。

Ia型超新星はどれも真の明るさが同じと考えられており、見かけの明るさと比較することでその超新星が出現した銀河までの距離を測定できる。宇宙の加速膨張はこうした観測研究からわかったことだが、宇宙膨張をより正確に理解するためにも、Ia型超新星の性質や爆発メカニズムを詳細に調べる必要がある。

ケプラーは系外惑星探査を主目的とした衛星だが、今回のように超新星を発見することも可能だ。SN 2018ohはケプラーが発見したものとしては、最も近距離に出現した最も明るい超新星だった。燃料切れのためケプラーの運用は今年10月で終了となったが、これまでに取得した膨大なデータの解析から、今後も新たな発見が続くだろう。

関連記事