超新星からの光のエコー
【2017年11月14日 NASA/HubbleSite】
おおぐま座の方向1140万光年彼方に位置する銀河M82は、活発な星形成活動を行う「スターバースト銀河」の一つだ。2014年1月、この銀河に超新星「SN 2014J」が出現した。Ia型超新星としては過去40年で最も近距離に現れた超新星で、アマチュア天文ファンにも観測可能な11等級まで明るくなった。
超新星からの光は、直接地球に届くもの(超新星として観測されるもの)だけでなく、周囲に広がる巨大な塵の雲で反射して地球に届くものもある。こうした反射は「光のエコー(こだま)」として観測されるが、エコーは直接届く光よりも長い距離を進むので、それだけ地球に届くのが遅くなり、その遅れは超新星から遠いところで反射するほど大きくなる。
結果として、長い年月にわたって超新星を観測していると、この光のエコーの位置がだんだん外へと移っていく様子がとらえられる。ハッブル宇宙望遠鏡が2014年11月から2016年10月12日までの約2年で撮影したSN 2014Jの光のエコーが以下の画像だ。超新星の周囲に広がる塵の雲は300光年から1600光年の大きさに広がっている。
天の川銀河外で超新星爆発による光のエコーが観測されたのは、これまでに15例しかない。現在の観測技術の解像度でとらえることができるのは、SN 2014Jのように比較的近距離で発生した超新星のエコーに限られてしまうからだ。
〈参照〉
- NASA:Hubble Shows Light Echo Expanding from Exploded Star
- HubbleSite:Hubble Movie Shows Movement of Light Echo Around Exploded Star
〈関連リンク〉
- HubbleSite
- アストロアーツ:
- メシエ天体ガイド
- 投稿画像ギャラリー:
関連記事
- 2024/09/26 地上燃焼の理論でIa型超新星の爆発モデルの検証に成功
- 2024/07/12 現代に再び目覚めた、『吾妻鏡』の超新星残骸
- 2024/03/18 ハッブル定数の食い違い、JWSTの観測でも裏付けられる
- 2023/05/22 Ia型超新星からの電波を初検出
- 2021/12/16 光度変化が特異なIa型超新星は、特異な進化過程を経て爆発した
- 2021/06/09 最も高密度な白色矮星による超新星爆発の痕跡を特定
- 2021/05/21 超新星で探る宇宙膨張の歴史
- 2021/02/15 天の川銀河の中心に「ミニ超新星」の残骸
- 2021/01/12 ティコの超新星の原因、残骸の膨張速度にヒント
- 2020/10/13 元素組成から探るIa型超新星の起源
- 2020/09/17 スーパーチャンドラセカール超新星は「星の中」で起こる爆発か
- 2020/06/08 天の川銀河のリチウムの1割は新星で作られた
- 2020/01/31 超高輝度超新星SN 2006gyの正体を解明
- 2019/06/04 すばる望遠鏡、遠方の超新星を大量発見
- 2018/12/07 探査機ケプラー、珍しい超新星爆発の初期段階を観測
- 2018/09/28 マンガンやニッケルに富むIa型超新星、決め手は質量と金属量
- 2018/03/01 ケフェイド変光星の距離改良で導かれたハッブル定数の不一致
- 2017/10/12 Ia型超新星のヘリウム核融合反応説を支持する初の観測的証拠
- 2017/08/31 Ia型超新星からのX線を初検出
- 2016/06/10 「限界を超えたIa型超新星」の起源を解明、降着説を支持