「100点満点で1000点」、「はやぶさ2」第2回着陸に成功
「はやぶさ2」のプロジェクトチームは7月10日9時58分(日本時間、地上で事象を確認した時刻。探査機上の時刻は約13分前となる。以下同)から第2回タッチダウン(PPTD)の降下運用を開始した。
「はやぶさ2」は順調に高度を下げ、7月11日9時54分には高度30mでホバリングを開始し、事前に着陸地点に投下してあるターゲットマーカーをカメラで捕捉した。プロジェクトエンジニアの佐伯孝尚さんによると、マーカーをとらえるまでには4分間ほどの時間を要する見込みだったが、機体の航法誘導の精度が非常に高く、撮影開始から1分ほどでカメラの視野内にマーカーをとらえることができたという。
その後「はやぶさ2」はターゲットマーカーを視野中央に追尾しながら自律的に降下を行い、10時09分には高度8.5mまで降下した。ここから着陸地点に向かって機体を水平に移動させ、同時にリュウグウ表面の地形に合わせて機体の姿勢をやや傾ける動作を行った。10時18分から最終降下を行い、10時20分(機上時刻:10時06分)に着陸地点「C01-Cb」にタッチダウンした。
「はやぶさ2」は接地と同時に弾丸を発射した。これによって舞い上がったリュウグウの物質がサンプラーホーンに入り、物質の採取に成功したとみられる。接地時間は数秒間で、「はやぶさ2」はすぐに上昇した。
10時39分には「はやぶさ2」が姿勢を変え、高利得アンテナ(HGA)を再び地球に向けた。運用チームではテレメトリ(機体の状態を示すデータ)や撮影画像などを受信し、着陸後も機体が健全であること、着陸シーケンスが中止されずにすべて完了していること、弾丸の発射コマンドが発行されていることを確認し、10時51分にプロジェクトマネージャの津田雄一さんがタッチダウン成功を宣言した。
運用管制の拠点となるJAXA相模原キャンパスで14時から行われた記者会見で、津田さんは「私たちは太陽系の歴史を手に入れることができました」と語り、今回の運用を「100点満点で1000点。パーフェクトだった」と評価した。
佐伯さんは「はやぶさ2」の弾丸を発射する火工品付近の温度データを示し、10時06分(機上時刻)ごろを境にして温度が約10度上昇していることから、この時刻に接地して確かに弾丸が発射されたとみられることを説明した。
また、この会見中にサンプラー担当の澤田弘崇さんが運用室から会見場に駆けつけ、受信されたばかりの小型モニタカメラ(CAM-H)の画像を紹介した。プロジェクトサイエンティストの渡邊誠一郎さん(名古屋大学)は、これらの画像を見た第一印象として、「リュウグウはスペクトル観測ではどこも似たような特徴を持っているにもかかわらず、今回の採取で飛び出してきた物質の量や形、色などは第1回タッチダウンのときとはだいぶ違っているように見える。第1回タッチダウンでは平べったい岩石の破片が多くみられたが、今回はそこまで多くなく、明るい色の破片がより多いようだ。それぞれの場所に個性があることがわかったのはきわめて重要」と語った。
「はやぶさ2」は今後、着陸地点の詳細観測を行うとともに、今年末のリュウグウ出発に向けた準備も始める。また、最後の小型機「MINERVA-II2」の投下ミッションも残っている。
(文:中野太郎)
関連記事
- 2024/11/27 リュウグウの砂つぶに水の変遷史を示す塩の結晶を発見
- 2024/09/25 「はやぶさ2」が次に訪れる小惑星に「トリフネ」と命名
- 2024/09/12 「にがり」成分からわかった、リュウグウ母天体の鉱物と水の歴史
- 2024/08/09 「はやぶさ2」が次に訪れる小惑星は細長いかも
- 2024/07/18 リュウグウ試料から生命の材料分子を80種以上発見
- 2024/05/09 リュウグウの試料中に、初期太陽系の磁場を記録できる新組織を発見
- 2024/01/29 リュウグウに彗星の塵が衝突した痕跡を発見
- 2023/12/25 タンパク質構成アミノ酸が一部の天体グループだけに豊富に存在する理由
- 2023/12/15 リュウグウの岩石試料が始原的な隕石より黒いわけ
- 2023/12/13 「はやぶさ2♯」の目標天体2001 CC21命名キャンペーン
- 2023/12/07 リュウグウ試料が示す、生命材料の輸送経路
- 2023/11/15 リュウグウ試料に水循環で生じたクロム同位体不均質が存在
- 2023/10/03 リュウグウの見え方が宇宙と実験室で違う理由
- 2023/09/21 リュウグウ試料から始原的な塩と有機硫黄分子群を発見
- 2023/08/29 「はやぶさ2」の旅路から得られた、惑星間塵の分布情報
- 2023/07/26 「はやぶさ2」が次に目指す小惑星、イトカワと類似
- 2023/07/19 リュウグウの炭酸塩に、母天体が独特な環境で進化した形跡
- 2023/04/25 リュウグウ粒子に残る、穏やかな天体衝突の記録
- 2023/04/13 「はやぶさ2♯」探査目標の小惑星による恒星食、1地点で減光を観測
- 2023/04/06 リュウグウでアミノ酸が生成された痕跡