リュウグウ試料の磁気から探る初期太陽系の磁場環境

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「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウ試料の磁気を測定した研究で、リュウグウの母天体が太陽系形成後約300万~700万年に経験した水質変成時の外部磁場環境を記録している可能性を強く示唆する結果が得られた。

【2026年3月9日 東京理科大学

太陽系の形成と進化を理解するうえでは、原始太陽系円盤を構成していた物質がどのような環境のもとで形成され変化してきたのかを明らかにすることが重要である。

原始太陽系円盤の環境のうち磁場は、弱く電離した原始太陽系星雲ガスの運動によって生成、維持され、星雲内物質はこの磁場と相互作用しながら成長・進化してきたと考えられている。そのため、地球に飛来したコンドライト隕石などに代表される始原的物質には原始太陽系星雲の磁場環境に関する情報が記録されていると考えられ、こうした物質の研究によって、太陽系進化史の理解が深められる。

原始惑星系円盤の想像図
原始惑星系円盤の想像図。原初の太陽系もこのような姿をしていたと考えられている(提供:ESO/L. Calçada

探査機「はやぶさ2」がサンプルを持ち帰った小惑星「リュウグウ」は、小惑星帯に多く存在する炭素質のC型小惑星であり、コンドライト隕石などと同様に地球誕生以前の太陽系の化学組成を保っている始原的な天体の一つだ。リュウグウの試料は太陽系初期環境を直接調べる貴重な機会を提供しているが、回収された試料は極めて微小で磁化も弱く、磁気測定そのものが技術的に大きな課題となっていた。

また、従来の研究ではミリメートルサイズの比較的大きなリュウグウ試料に限って磁気分析が行われ、解析された試料数は10個以下にとどまっていた。そのため、得られた分析結果が研究チームごとに異なり、リュウグウ試料が記録している磁気情報の解釈について統一的な見解は得られていなかった。

東京理科大学の佐藤雅彦さんたちの研究チームは、高感度の超伝導量子干渉素子(SQUID)磁力計を開発し、ミリメートルサイズより小さいリュウグウ試料に対して磁気測定を実施した。測定対象とされた試料の数は28個と多く、リュウグウ試料の磁気特性を系統的に評価することが初めて可能となった。

測定の結果、28個のうち23個から磁気記録が検出された。リュウグウ試料が、太陽系形成後およそ300万~700万年に母天体で起こった水質変成の際の外部磁場環境を記録している可能性を強く示唆する結果である。

磁気記録成分の検出と未検出の例
(左)リュウグウ粒子「A0225-03」(画像左上)から検出された安定した磁気記録、(右)リュウグウ粒子「C0213-06」(画像右上)からは安定な磁気記録は検出されなかった(提供:東京理科大学リリース、以下同)

この成果は、微小な試料の磁気測定が太陽系進化史を解明する強力な手法として有用であり、太陽系形成期における磁場環境に制約を与えられることを示している。将来の地球外天体探査やサンプルリターン計画において、磁気情報を重要な科学的指標として活用するための基盤となるものだ。今回の高感度磁気測定手法を他の試料へ展開することで、太陽系形成初期における磁場環境の時間的・空間的変遷が、より詳細に復元されることが期待される。

リュウグウ試料の磁気記録の性質
リュウグウ試料の磁気記録の性質

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