ベンヌ試料から核酸塩基と高濃度の尿素を検出
【2026年4月9日 北海道大学】
2023年9月にNASAの探査機「オシリス・レックス」が炭素質小惑星ベンヌ(ベヌー)の試料を地球へ持ち帰った。これまでの分析で、ベンヌの試料からはアミノ酸など多くの生体関連分子や、リボースなどの糖類が検出されている。
北海道大学低温科学研究所の大場康弘さんたちの研究チームは今回、ベンヌ試料に対して、核酸塩基など窒素を含む有機化合物の分析を行った。

(左)小惑星ベンヌ。(右)分析に用いられたベンヌ試料(黒、OREX-800107-108)。白は二酸化ケイ素粉末で、分析過程で混入する汚染や使用する試薬などに由来する測定値の確認(操作ブランク検証)に用いられる(提供:(左) NASA/Goddard/University of Arizona 、(右)北海道大学リリース)
その結果、生命の遺伝子に含まれる全5種の核酸塩基(シトシン、ウラシル、チミン、アデニン、グアニン)を含む、窒素複素環化合物が合計38種類検出された。そのうちの少なくとも4種類は、従来の地球外物質分析で未同定のものだという。

ベンヌ試料から検出された核酸塩基5種の構造式(提供:北海道大学リリース)
5種の核酸塩基の中では、RNAにのみ用いられるウラシルが最も多かった。過去の分析でRNAの構成成分であるリボースが検出されていることと合わせて、生命誕生前の化学進化でRNAが重要な働きをしたとする「RNAワールド仮説」を支持する結果といえる。
一方、核酸塩基と糖が結合した化合物「ヌクレオシド」は、これまでの地球外物質の分析で検出された例はなく、今回も確認されなかった。ベンヌ上での低温反応環境がヌクレオシド合成に到達していなかったことを示唆している。
また、窒素複素環化合物に加えて、生体の代謝産物としても知られる尿素も高濃度で検出された。尿素はアンモニアに富む低温環境で容易に生成可能で、ウラシルをはじめとする核酸塩基合成の材料として知られている。

尿素および尿素が材料となったと考えられる、ベンヌ試料から検出された代表的な窒素複素環化合物の構造式。尿素骨格を青でハイライトしている(提供:北海道大学リリース)
ベンヌ母天体の環境を模擬した熱水反応実験からは、低温環境での化学プロセスだけでなく、比較的暖かい環境での化学プロセスも試料中の有機化合物分布に影響している可能性が示された。宇宙における分子の複雑化の過程や、「宇宙で誕生した有機分子のうち、どのようなものがどれほど地球に供給されたのか」といった情報は、前生物的化学プロセスの解明に向けた大きな手がかりとなる 。

ベンヌで検出された核酸塩基誕生までの宇宙における化学進化と地球への有機物供給に関する概念図(提供:NASA、国立天文台)
〈参照〉
- 北海道大学:小惑星ベヌー試料から核酸塩基と高濃度の尿素を検出~小惑星環境での化学プロセスの絞り込みに成功~
- Nature Communications Chemistry:Distribution of extraterrestrial nucleobases, other N-heterocycles, and their precursors in a sample from asteroid Bennu 論文
〈関連リンク〉
- OSIRIS-REx:
- RNA Japan
- 火星衛星探査計画(MMX)
- MMX応援キャンペーン特設サイト『#グッドラックMMX』
関連記事
- 2026/03/27 リュウグウ試料からDNA・RNAを構成する全5種の核酸塩基を検出
- 2026/03/09 リュウグウ試料の磁気から探る初期太陽系の磁場環境
- 2025/12/08 ベンヌ試料から6種類の糖を検出
- 2025/09/01 ベンヌの原材料物質は多様な起源を持っていた
- 2025/08/22 2025年8月29日 ヘーベがみずがめ座で衝
- 2025/08/13 リュウグウに残された「衝撃の痕跡」を実験で再現
- 2025/07/25 リュウグウ試料で太陽系最古の岩石の年代測定に成功
- 2025/07/24 2025年7月31日 パラスがいるか座で衝
- 2025/05/29 中国「天問2号」の打ち上げ成功、2つの小天体を探査
- 2025/05/09 2025年5月18日 ジュノーがへび座で衝
- 2025/04/24 2025年5月5日 ベスタがてんびん座で衝
- 2025/04/23 探査機「ルーシー」、2つ目の小惑星をフライバイ
- 2025/04/14 AI技術でリュウグウとベンヌの全ての土砂を高速自動計測
- 2025/02/06 小惑星ベンヌの試料からアミノ酸など多くの生体関連分子を検出
- 2024/12/13 日本で撮影された青い低緯度オーロラの出現場所を推定
- 2024/11/27 リュウグウの砂つぶに水の変遷史を示す塩の結晶を発見
- 2024/11/14 「COIAS」発見小惑星に「アオ」命名、15日に「命名祝賀会」配信
- 2024/10/08 二重小惑星探査機「ヘラ」、打ち上げ成功
- 2024/09/12 「にがり」成分からわかった、リュウグウ母天体の鉱物と水の歴史
- 2024/08/09 「はやぶさ2」が次に訪れる小惑星は細長いかも









![[アストロアーツ かけはしプロジェクト:つなげよう日本 子供達の未来を守るために]](https://www.astroarts.co.jp/official/kakehashi/image/kakehashi_s.jpg)